四川ではいつもの蒙頂山へもお伺いしました。
弊店がお世話になっている作り手さんで、いつも家族のように迎えてくれます。
蒙頂山の中でも茶摘みが遅い地域とはいえ、訪れた時期はちょうど春茶の製茶が一段落した時期で、茶畑は静かさを取り戻していました。時折、茶摘みをしている摘み子さんを見かけるものの、本当に静かでのどかな茶畑の風景が広がっています。この時期は茶樹を休ませるため、畑や製茶器具のメンテナンスにはいっていました。
茶畑には人間よりも鶏や山鳥が多いようです。これは茶畑のそばにある作り手さんの自家用の畑ですが、どうやら七面鳥のような鳥が歩いていました。何でも野生の山鳥なんだとか。作物を荒らしていたようですが、作り手さん曰く「山に住む者でみんなで分ければいいんだよ。」と一向に気にしていません。そんな大らかな作り手さんを表すかのように、鳥や虫など、たくさんの生き物がいる静かだけれど賑やかな茶畑です。
ひと通り製茶場の周囲の茶畑を作り手さんと近況を話しながら回ったあとは、すっかり火の落ちた製茶場で後熟成をさせている途中のお茶を品茶していました。静かな製茶場は少し寂しそうな感じがしますが、一時的なもの。この後は紅茶の製茶や黄茶の熟成、昨年からはじめた昔ながらの石灰による後熟成中の緑茶の手入れなど、まだまだ忙しさが続きます。一瞬のお休みといったところです。
久しぶりの製茶場を見せていただいていると、作り手さんが楽しそうに説明してくれた製茶機械がありました。なんと、この機械を自作しているとのこと。
この作り手さんは本当に研究熱心で、昔の文献や引退したお年寄りから昔の製茶方法を聞いたり、他の地域の製茶方法を参考にして良い所を取り入れたりしています。製茶が忙しくない時期は大学の農学部へ講師として呼ばれることもあるほどなのですが、まさか製茶機械まで自作しているとは思いませんでした。一番忙しい時期が終わり、紅茶や花茶の製茶がはじまるまでは色々と試行錯誤しながら研究すると、とても楽しそうに話してくださいました。
やっぱりこの作り手さんのお茶は美味しいです。その理由が分かった気がします。
中国を代表する銘茶、中でも希少性の高い黄茶の蒙頂黄芽です。
かつては皇帝への献上茶として作られていたお茶ですが、産地が限られていることや、その独特の製法(悶黄)などから、中国でもごく一部の地域でしか作られていません。一般的に黄茶は独特の風味が強いものが多く、好みが分かれますが、この蒙頂黄芽は誰もが美味しいと思うような品格のある黄茶です。
2016年は現地の流行もあり、悶黄の弱いタイプが主流となっています。
現在流通する黄茶は緑茶と変わらないようなタイプが殆どですが、鈴茶堂では作り手さんに依頼し悶黄のしっかりした昔ながらのお茶を特別に作っていただきました。
こだわりの蒙頂黄芽です。
特に今年は産地でも雨が多く、昔ながらの蒙頂黄芽を作るのには大変に難しい年であったようです。産地の蒙頂山でも悶黄という特別な工程のある黄茶となると今年は作れないという茶業も少なくありませんでしたが、当店が懇意にしていただいている作り手さんの技術の高さが実感できる、これまでにない良い出来あがりになっています。
ここ数年ご紹介ができずにいましたが、今年は入荷しています!
中国、浙江省金華市でも古くからお茶が作られています。商業的な生産を目的とした茶業さんや茶農家さんはもちろんですが、一般家庭でも春になるとその年のお茶を作る習慣が残っています。
生活の習慣の中に当たり前のように
「家族のお茶をつくる」
ということが入っている地域です。
このお茶は現地に住む親友のお母様が毎年手作りしているもので、名前のない自家製茶です。野生茶樹から作るお茶のため、いつしか野生茶と呼ぶようになりました。普段は全くと言ってよいほどに人が立ち入らない急斜面の山の中に自生する野生茶樹から作られました。標高約800mの急斜面を1日茶摘みをして回っても1日で作れるお茶の量は多くてもたった250gとのこと。山が厳しいうえに野生茶樹は品種改良された茶樹と違って成長が遅く、また点在して自生しているために、少しずつしか摘むことができません。苦労して摘み取られた茶葉は昔ながらの方法で丁寧に製茶されます。
昔からの土着のお茶です。一般に販売されることのない自家製茶です。
その作る苦労からか、今では現地でも作る人が少なくなりつつあります。