易武天能茶庄

易武天能茶庄

易武古鎮にある友人の茶庄を訪ねてきました。
この易武天能茶庄は易武でも9代続く古くからある茶業の1つです。大きな茶業ではなく、家族、親戚と近くに住む昔から代々手伝いをしてくれる従業員家族数名(従業員も代々この茶業で働いているのだそうです)で営まれています。
機械を使わずに丁寧な仕事で、とても甘く優しい「易武」らしい清らかなお茶を作ります。古茶樹にこだわり、その真摯な仕事ぶりと理論的な製茶はとても美味しく、以前から私自身が愛飲させていただいています。

この時は12月ということで基本的に製茶はお休みです。それでも、こうして餅茶の成形を行うことのできる製茶場には他の茶農家や茶業から成形の依頼が入ってきます。毛茶の状態で熟成を行った普洱茶を成形して出荷します。この時も易武の他の茶業から持ち込まれた普洱茶の成形が行われていました。

製茶については2017年の4月に再訪した際にゆっくり見せていただきましたので、また改めてご紹介させていただきますが、この製茶場には最低限の製茶機械しかありません。揉捻機はもちろん、篩分機も乾燥機もありません。あるのは餅茶の成形の際に使う茶葉を蒸す機械だけです。徹底して昔ながらの手作業にこだわる姿勢が、この美味しさを作り出しているのかもしれません。

易武天能茶庄

そして、この製茶場の清潔さも徹底しています。製茶場への入場は必ず靴を履き替え、指定の帽子をかぶらなければいけません。髪の毛の長い女性は帽子の中に髪の毛を入れることと定められていて、こうした小規模な製茶場でここまで衛生管理に徹底している製茶場も非常に珍しいと思います。有名な製茶企業の工場でもここまで清潔に徹底した管理を行っているところは滅多にありません。

この写真は直前まで餅茶を形作る圧延工程が行われていた場所です。本当に綺麗ですね。
この製茶場ではもちろん昔ながらの石の重しを使った石磨圧延を行っています。人が全てを行うので、とても重労働ですが、機械で圧延するよりも熟成が柔らかく進み、味わいも香りも良くなります。この製茶場では石磨圧延しか行いません。

易武天能茶庄

石磨圧延に使用する重しにも色々なサイズがあります。これは通常よりも大きな餅茶、1斤(500g)餅をつくる際に使用するものです。通常よりも2回りほど大きいサイズになっていますが、厚みはその分減るようです。聞けば人が持ち上げて作業するので、あまり重くすると作業ができないということや、身体を痛めてしまうとのこと。確かにそうですね・・・通常の大きさでも、この重しは相当な重さがあります。石磨圧延の大変さが分かります。
ちなみに写真は友人の老板(社長)です。軽々と持ち上げていますが、普段から自ら製茶しているので、かなりの力持ちです・・・

易武天能茶庄

通常、こういった小さな製茶場でも餅茶を乾燥させる機械や乾燥室が用意されています。しかし、ここでも「晒日」にこだわります。この製茶場にはそういった機械や設備はありません。製茶のご紹介の際に改めてご紹介させていただきますが、実はガスすらも使いません。殺青工程も味に関わるから全て薪を使用する徹底ぶりです。

隣の部屋では乾燥の終わった餅茶の包装が行われています。慣れた手つきで美しく餅茶を包装していきます。

易武天能茶庄

この餅茶を包む紙は通常の紙とは少し異なります。楮が多く含まれた専門の紙を使用します。最近はこの紙も品質の良くないものが増えているそうで、長く保存、熟成させるお茶を包む紙がそのようなものであってはならないと、紙の品質にもこだわっているそうです。
写真は珍しく何も印刷されていないものですが、通常はお茶の種類などを印刷したものを使用します。(この餅茶はこの後に有名な書家の方に筆入れしていただくそうです。)

易武天能茶庄

通常、易武などの産地では製茶したお茶は全て出荷してしまいます。しかし、ここは小さいながらも乾倉を持っています。殆どは出荷してしまいますが、自分たちが気に入ったお茶、とっておきのお茶などは、この製茶場の端にある乾倉で熟成が行われています。
温湿度の管理は本当に厳しく管理していて、こうした温湿度計が1mおきに設置されています。このこだわりはかなりもので、この製茶場を訪れる人が普洱茶を求めても、この乾倉で保管しているお茶については老板(社長)が話をして納得しないと売りません。主に話をするのは保管場所の話。私も以前からお茶を買わせてもらう度に保管場所の平均温度と平均湿度を聞かれます。それに老板が納得して初めて譲ってもらうことができます。厳しいです。(^^;

易武天能茶庄

これだけ徹底して昔ながらの手工、手作りにこだわり、保管にも熱心な茶業というのも珍しいと思います。現在の老板のお父様、何能天老師は易武でも名茶師として有名な方です。息子である現在の老板は、その技術を感覚だけではなく、きちんと論理的にも整理、実践、改善していくことで易武のお茶を守ろうとしています。易武に限らず、製茶業では珍しいタイプで、これからの易武の発展はこうした若手にかかっているのかもしれません。


能天源七子餅茶 易武正山古樹 古式手工 2014
能天源七子餅茶 易武正山古樹 古式手工 2014

ようやくショップでご紹介するために譲ってもらうことができたお茶がこちらです。
易武天能茶庄の乾倉で3年間、大切に熟成させています。

使用する茶葉は易武の山深い場所にある自然のままに育った古茶樹、茶葉の殺青(発酵を止める工程)もガスではなく薪を使い、製茶機械を可能な限り使用しない昔ながらの製法にこだわっています。もちろん、圧延工程も昔ながらの石磨圧延です。

非常に高く綺麗な、そして長く続く見事な、易武の人たちの言うところの「蘭花香」が感じられます。ちょうど熟成が一段落したところで、本来持っている香り高さに加えて蜜のような甘い香りも深く出ています。易武らしい甘味は深くしっとりと、優しいミネラル感とあわせて複雑な、それでいて喉に心地よい仕上がりになっています。3年間熟成させていますが、易武での徹底した乾倉管理ということもあり、いわゆる陳香は感じられません。

飲み終えた時にはぜひ葉底、茶殻もご鑑賞ください。大変に丁寧に作られた綺麗な茶葉です。

2017年 麻黒寨 喬木古樹茶
2017年 麻黒寨 喬木古樹茶

易武、麻黒寨の茶農家を営む友人の作った喬木古樹茶です。

できたばかりの普洱生茶は強くて美味しいと感じられないと思いがちですが、このお茶は違います。雲南の普洱茶の中でも特に易武は甘いお茶であることが知られていますが、この麻黒寨で作られたお茶はその特徴がよく分かるように優しく甘いお茶に仕上がっています。香りは見事な蜜香が感じられ、飲み込んだ後の余韻も非常に長く強く感じられます。しっかりとしたミネラル感がありながらも、優しく、とても心地の良いお茶です。

ここ数年、普洱茶の作り方は少しずつ変わってきています。これは易武に限らず、全体に言えることです。その変化が良く分かる普洱茶だと思います。易武らしさは十分に、萎凋を丁寧に長く行い、普洱茶として最高に丁寧に作られた上質なお茶です。普洱茶の概念が変わるお茶かもしれません。