ラサ お茶事情

ラサ市内

チベットではバター茶(酥油茶・ཇ་སྲུབ་མ་)や甜茶と呼ばれる甘いミルクティーを日常的に飲んでいます。
気候が厳しいという理由から、平地にある他の地域のようにミルクなどの乳脂肪分を入れずにそのままお茶を楽しむといったことや、塩や砂糖を入れずに楽しむといったことはほとんど無いようです。

これは街中にたくさんあるバターやミルク、チーズを販売するお店です。基本的にはヤク(牦牛・གཡག་)のミルクを使用しています。
実際にはヤクよりも牛のほうが安価で販売されているそうですが、チベットの人々はあまり牛を好まないそうです。なかにはヤクのバターやミルクと偽って牛乳やそのバターを販売するお店もあるそうです。現地のチベット人の方によれば味が違うので飲んでみると違いが分かるそうです。

ラサ市内

バターやミルクだけではなく、甜茶や茶葉を販売するお店もたくさんありました。
使用、販売されている茶葉のほとんどは四川省で作られた蔵茶です。鈴茶堂では味わいの関係から四川省雅安茶廠(中国蔵茶)の蔵茶しか扱っていませんが、実際に蔵茶を製造する茶廠はたくさんあります。ほとんどが四川省雅安茶廠から独立して設立した茶廠で、その味わいは様々です。四川省雅安茶廠のように癖の少ないものもあれば、かなり癖が強いものまで様々です。
他には湖南省で作られる茯茶がちらほらと見られましたが、雲南省の普洱茶は殆ど見かけることはありませんでした。おそらく普洱茶は他の地域で人気が高く、価格が高騰しているため、日常的なお茶としてチベットへ運ばれてくることが今は少なくなってきてしまっているのだと思います。その反面、蔵茶はチベットの人々が日常的に飲むことができるように中国政府によって価格が値上がりすぎないようにコントロールされています。

ラサでは漢民族を中心としたチベット以外の場所から移住してきた人々のためと思われる茶荘(茶葉販売店)も少ないながら見られます。こういった茶荘は他の地域と変わらず鉄観音や普洱茶、緑茶なども販売しています。

丁江茶馆

茶館もたくさんありました。
歴史のある有名な茶館から地元の人しか行くことがないローカルな茶館まで様々です。その数は最も茶館が多いと言われる四川省成都を越えるのではないかと思うほどです。ただし、成都の茶館の殆どは麻雀やトランプをするための、日本で言うところの雀荘というタイプのものですので、純粋にお茶を楽しむ茶館としてはラサの方が多いのかもしれません。

チベットの茶館でのお茶はほとんど甜茶と呼ばれるミルクティーしか選ぶことはできません。バター茶はどちらかと言うと食事に近いものになるそうで、茶館によっては扱っていないお店もありました。逆にレストランや食堂ではバター茶を提供していることが多いようです。

丁江茶馆

茶館には色々な人達がやってきます。
一人でくる人はもちろん、小さなお子さん連れのお母さん・おばあちゃん、若い人からお年寄り、なかには商談をするために来る人も見かけました。知らない人でも近くに座れば仲良く世間話が始まるのもチベットならではです。

そして必ず見かけるのが物乞いをする人たちです。茶館でお茶を飲んでいると必ずと言って良いほど見かけます。中には子供の物乞いもいて、歌を歌うからお金をくださいというような子も見かけました。
日本や他の地域ではあまりこの感覚はありませんが、チベットでは物乞いの人にお金を渡すことを美徳としていました。物乞いをしている人は何らかの事情で働くことができないため、それを支えることで功徳を積むという仏教の考え方です。大体金額にして5角(日本円で大体8〜9円)を渡していました。
お金を受け取る方も仏教の考え方を持っていて、必要以上には受け取らないようです。ある時、細かいお金がなかったため、5元(日本円で大体8〜90円)を渡そうとしたところ、多すぎるとして断られてしまいました。現地の人が言うには、そういった時はお茶を奢ってあげるそうです。

ラサでは本当にお茶で人々が繋がっているようです。


昨年は早い時期に完売してしまった明前 四川玖瑰紅茶、雲南の緑茶も入荷しております!
どちらも日本にはあまり輸入されることのないお茶ですが、珍しいという以上に美味しくお楽しみいただけます。

思茅 頭春茶
思茅 頭春茶

頭春茶と呼ばれる雲南緑茶です。中国・雲南省南部の思茅にある標高1800m付近にある茶園で2014年3月15日に摘み取られました。今年に最初に摘み取られた茶葉で作られたお茶です。

思茅はお茶づくりの歴史がとても古い地域です。多くの野生茶樹、人工栽培の茶園、過去に人工栽培の茶園として利用されていたけれども何十年と放置された古茶樹園など様々な種類の茶樹が豊富に存在しています。

甘い爽やかな花の香りと雲南紅茶を連想させるような深みのある優しい甘さが感じられます。飲み終えた後の余韻も長く、体の中から甘さが戻ってきます。
特に2014年は甘さが強く美味しく仕上がっています。

明前 四川玖瑰紅茶 2014
明前 四川玖瑰紅茶 2014

人気の四川高山紅茶の明前茶です。

名前にある玖瑰(メイグイ)は日本で言うところのハマナス、バラの原種です。
この四川紅茶はその玖瑰の香りのする紅茶として命名されています。後から香りを添加したり、花茶のように花の香りを移した紅茶ではなく、茶葉本来の香りがまるでバラのようであることから名づけられています。四川省蒙山の標高1200m以上という高山地帯で栽培された茶葉を3月15日に摘み取って作った特別な紅茶です。

緑茶と違い、酸化発酵を行って作る紅茶の場合はある程度成長した茶葉が必要になります。若い茶葉で美味しい紅茶を作るには高い技術力が必要です。この紅茶がとても美味しく仕上がっているのは、この作り手さんが常に真摯に製茶技術の向上を日々努力している結果です。四川高山紅茶を既にお楽しみいただいている方には、その技術の高さが実感していただけていると思います。

黒々とした茶葉に金粉をまぶしたような、金色の美しい茶葉は甘い可憐なバラの香りがあり、柔らかく品のある自然な甘味とミネラル感を味わっていただけます。淹れたお茶の湯温が下がるとまた変化します。花の香りと合わせてキャラメルのような甘い香りが立ち上り、味わいもより深い甘みが増してきます。
特に2014年は香りも甘味も非常に綺麗に出ています。