紫砂作家の工房

宜興

このあたりは丁蜀鎮の中でも作家さんの工房が密集している地域です。
割と小規模な工房が多く、ほとんどの工房では作品を展示、販売しながら、奥で制作活動もしているという感じになっています。また、工房だけでなく、金継ぎ修理屋さんなどもあります。

作家さんの工房が密集している地域とざっくり説明してしまっていますが、こういった場所は多数あります。写真の場所はまだ街中の方ですが、中には畑の中に点在する集落状態で、その集落全体が作家さんの工房の集まりだったりすることもあります。

宜興

また、いくつかあるビルの中にも工房がたくさんあります。
この写真の建物はとても有名で技術力の高い作家さんが多く集まる場所で、入居者一覧に書かれているお名前は、分かる人にはとてもすごい作家さんばかり並んでいます。ちなみにみなさんドアが結構立派な感じで(工房毎に違う感じです)知らないと絶対に中も覗けない雰囲気です。路面に面している工房とは全くイメージが違います。

とはいえ、こういった雰囲気の工房が集まる建物は少ない方で、殆どはビル(といってもマンションのような雰囲気です)の中でも通路から中を覗けるようになっている工房がほとんどです。やはり、有名な作家さんが多く集まる建物は特別な雰囲気なんですね。

宜興

若手女性作家の工房を訪問させていただきました。

作家の紫砂茶壺といっても、大きく分けて2つの作り方があります。
1つは全て手で作る完全手作りのもの、もう1つは型を用意して、そこに土を詰め込んで作り上げる半手作りのものです。

作家物でも価格が手ごろなものは型を使用した半手作りのものが殆どです。(安すぎるものは作家物と偽った工場製品だったりします)この方法だとかなり製作時間を短縮することが可能になります。

完全手作りのものは、やはりそれなりの価格になります。しかし、全体のバランスや陶肌の美しさ、なにより使い心地などは、完全手作りの方が優れています。
両方の方法を使って作る作家さんもいらっしゃいますし、完全手作りしかしない作家さんもいらっしゃいます。もちろん半手作りしかしない作家さんもいます。
例えば当店でも人気の高い湯宣武さんは完全手作りのものしか作りません。茶壺内に継ぎ目をあえて隠さないでおくことで、完全手作りということを証明しています。

宜興

写真は整形した茶壺を乾燥させているところです。

作家さんが1つの茶壺を作るのには、とても時間がかかります。その作家さんにもよりますが、先に挙げた湯宣武さんは新しい茶壺を作る際、数か月から長い時は半年以上、茶壺の設計に取り組みます。何度も作っては確認、直すべき部分があれば直すということをくりかえし、ようやく1つの作品パターンを完成させます。その期間はその作品を作るための設計と試行錯誤のためでもありますが、自分の手をその作品制作用に慣らすという意味もあるそうです。その作品パターンが完成するころには、以前の作品パターンとは「手」が変わってしまいます。そのため、過去の作品を作りたがらない作家さんも多くいらっしゃいます。再度「手」の調整からしていかないと過去の作品と同じものを作るのが難しいからです。

まさに茶壺は一期一会ですね。


湯宣武  聖珠
湯宣武 聖珠

使いやすい茶壺です。クラシカルな印象でありながら、品の良さと洗練さを感じるのは彼女の感性の高さと硬い材質であってもちゃんと扱うことができる技術力の高さによるものです。
しっかりと硬度のある上質な土から作られていますので、陶肌から自然に発する艶が非常に豊かに見られます。

王雲雲 秋韻
王雲雲 秋韻

工芸美術大師・社曼倫を師とする女性作家、王雲雲の作品です。
他の作家には真似できない女性らしい品格と美しさを備えています。
その造形の素晴らしさはもちろんですが、中でもこの作品は黄龍山の小紅泥のみを使用して作られています。この茶壺は自然に発せられる艶やかな陶肌の美しさはもちろん、触れると吸い付く様な心地よさのある作品に仕上がっています。