餅茶の乾燥と熟成

易武

餅茶の形に成形した普洱茶は天日でじっくりと乾燥させていきます。緑茶や青茶、紅茶などのように高温で乾燥させると早く乾燥することができますが、普洱茶特有の麹菌による醗酵をすることができません。(殺菌されてしまうため)そのため基本的には晒日、太陽の光で乾燥を行います。
最近は乾燥室などを使って乾燥させる製茶場も増えています。特に大手製茶場は殆ど乾燥室を使用しているようです。たしかに晒日で乾燥を行うには時間も場所も必要になります。また、天候によっては何日も何週間も乾燥に時間を要する場合もあります。この易武天能茶庄では乾燥室自体が存在しないため全て晒日、太陽の光で乾燥を行っていますが、こうした昔からの乾燥方法も段々と少なくなりつつあります。

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毛茶(荒茶)の乾燥のときと同じように雲南、西双版納の日差しはとても強く、太陽の光を加減しないと餅茶が焼けてしまいます。特に水分量の多かった毛茶の時とは違い、餅茶にしてからの最終乾燥は更に気を使う必要があります。そのため天候が良い日は野外ではなく、こうした乾燥用の室内で行います。屋根代わりに日差しを和らげるため半透明の日よけがあります。室温は20度後半から30度半ばあたりといったところで、乾燥用の部屋といっても温室のような感じです。ここで時間をかけてゆっくり乾燥していきます。

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半透明の日よけがあっても餅茶の乾燥状態によっては茶葉が焼けてしまいます。そのくらいに西双版納の日差しは強いのです。これは乾燥が進んできた餅茶が焼けないように更にダンボールを被せて日差しを遮っているところです。こまめに餅茶の状態を確認して日光をコントロールしていくのは手間のかかる作業です。またその判断も経験がないと分かりません。大手製茶場が乾燥室を採用する理由も分かりますが、ここではこの最終乾燥も天日以外は味わいに影響するため頑なに昔からの製茶方法を守っています。
余談ですが普洱茶の乾燥室は天日ではなく、温風で行います。ただし麹菌による後熟成ができるように低温で時間をかけて行います。それでも天日による乾燥が1週間以上は必要であることに対して、乾燥室を利用した場合は半日で終了することができます。

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通常、こうした産地の製茶場では製茶した茶葉は全て出荷されます。古いビンテージの普洱茶は産地には無いのが普通です。
この製茶場、友人は珍しく、製茶した普洱茶の一部は出荷せずに自らが管理する保管庫で熟成させています。保管庫はさほど大きくないため、その年の最も思い入れのある普洱茶を1ロット分入倉、熟成させているそうです。
この保管庫は徹底的に温湿度管理がされていて、保管庫内の至る所に温湿度計が設置されています。温度や湿度によって外気を入れたり、締め切ったりとこちらも細かくチェック、管理されています。また、保管庫内も土足厳禁、髪の毛を出したまま入らないなど、製茶場と同様の衛生管理もされています。


濃香系鉄観音と呼ばれる焙煎を施した鉄観音は、品質のあまり良くない清香系鉄観音を焙煎したり、売れ残った清香系鉄観音を焙煎しているものが多く見られますが、本来、濃香系鉄観音は清香系とは製法が異なり、元々の鮮葉の質、発酵度合いなど、全く異なる品質が茶樹栽培の時点から求められるものです。この鉄観音は鮮葉から濃香系鉄観音を作るためにこだわって作られています。

福建省安渓感徳の中でも標高1000mを超える山の中で作られた鉄観音です。鉄観音の原産地、安渓は今や随分と開発が進み、都会となっている部分も多いものですが、この鉄観音は安渓の中でも北側の感徳で作られています。感徳といっても大変広く、その中でも大変な山の中にある茶農家で作られています。標高が高いというだけでなく、電気がようやくあるのみといった昔のままの村で無農薬栽培で作られています。

感徳鉄観音 炭焙 2017秋 軽火
感徳鉄観音 炭焙 2017秋 軽火

とても品質にこだわる、そして製茶技術の高い作り手による鉄観音です。
2017年は気候にも恵まれ、大変良い仕上がりとなりました。
軽火といっても1ヶ月ほどかけて焙煎を行って仕上げます。フレッシュな味わいも残しつつ、炭焙煎の美味しさも加えたこの鉄観音は製茶に高い技術が求められます。

今楽しむのであれば上記の軽火鉄観音がお勧めですが重火(重焙煎)もご紹介いたします。

感徳鉄観音 炭焙 2017秋 重火
感徳鉄観音 炭焙 2017秋 重火

焙煎技術が高いため、通常の鉄観音よりも水分が少なく仕上がっています。(軽火も同様)時間と共に変わっていく美味しさをお楽しみいただけます。
特にこの重火は長期の後熟成を楽しむことを目的としていることもあり、大変にポテンシャルの高い茶樹の鮮葉を厳選して製茶しています。製茶してまもない今の時期はその茶樹の強さも感じます。実際の飲み頃は1年後、2018年末ごろからです。

すぐにベストな状態でお楽しみいただくには軽火をおすすめいたします。
重火との焙煎の違いを楽しむこともお勧めさせていただきたく、この重火は特別に後熟成が完了する前にご紹介させていただきます。

重火でのおすすめは2016年の秋茶が飲み頃です。