台中ではいつものように鹿谷郷の茶業さんなどを訪問させていただいたのとは別に魚池郷の日月潭紅茶(水沙連紅茶)の茶業さんもいくつか訪問させていただきました。
元々、この魚池郷ではお茶作りが行われていましたが、日本統治時代にこの地がインドのアッサム地方と気候が似ているとしてアッサム(阿薩姆)の苗木を持ち込み、紅茶の生産が行われるようになりました。日本の敗戦後、その紅茶の生産も少なくなってしまっていましたが、近年になって生産量も少しずつ増え、人気がでてきています。
魚池郷ではいくつかの茶業さんをが見学を許可していますが、中でもおすすめはこちらの廖鄉長紅茶故事館です。
とても美しい洋館の施設で、見学設備が整っているだけでなく、実際に製茶を行っている時期にはその様子も見学させてくださるようです。
日本統治時代に使われていた古い製茶器具や昔の写真などの展示もあり、魚池郷の製茶の歴史を学びたい場合にもおすすめです。日本語での説明などはありませんが、漢字ですので中国語が分からなくても何となくその内容は理解できます。
施設内ではここで作られている紅茶の試飲もできるようになっています。色々な品種を試してみたいという場合にも嬉しいですね。
こちらは廖鄉長紅茶故事館ではありませんが、日月潭紅茶用に管理されている茶畑です。無農薬、有機栽培を徹底して栽培されているとのことで、その茶園管理の大変さが伝わってきます。
近年では紅茶ブームということもあり、少しずつ台茶18號などの栽培も増えてきたそうですが、実際にはまだまだ少なく、実際に魚池郷で作られたものではない「日月潭紅茶」も多く出回っているとのことなど、色々なお話を作り手さんなどからお伺いさせていただきました。
当店の紫砂茶壺は美味しくお茶を楽しむことのできる道具であるということに加えて、造形に狂いがないものという視点で選んでいます。当然、重要なのはその土質ですが、現在の紫砂とはまた異なる上質な土として知られている早期壷をご紹介します。
文化大革命の時代、1970年代から1980年代にかけて作られた紫砂茶壺は早期壺と呼ばれ、非常に上質な土を使用していることで知られています。当時は中国国内での需要を満たすためというよりは輸出用に作られ、それらはヨーロッパや香港、台湾、そして日本へ輸出されていました。当時の土は現在のものとは異なり、著名な作家の作品ではなくても、とても美味しくお茶を淹れることができます。
現在のように紫砂作家がそれほど確立されていない時代であったことから、早期壺の多くは大量生産品でした。そのため土質はとても上質であるもののその造形が甘いものが多くあります。この茶壺はそういった早期壺の中でも珍しく、素晴らしく整った造形と繊細な彫刻が施されています。
この水平壺は中国宜興で作られた後に台湾へ運ばれ、早期壷の収集家の手元で大事に保管されてきたものです。
中国浙江省を代表する紅茶として知られる九曲紅梅が今年も入荷しました。
この紅茶は福建省北部の武夷山付近から太平天国の乱の混乱を避けて浙江省のこの地へ湖埠へ移住してきた人々が作り出した紅茶と言われ、
その名にある九曲は武夷山にある九曲溪から名づけられたものと言われます。
この紅茶の伝統的な茶樹品種は在来種である鳩坑小葉種ですが、実際には様々な品種が使われています。龍井茶の品種が使われているとも言われますが、このお茶はその伝統的な鳩坑小葉種のみを使って作られています。
大湖山で栽培された伝統的な品種と製法を守って作られています。とても技術の高い現地では非常に有名な作り手が全て手作業で機械を使わずに作ったとても上質な九曲紅梅です。
2014年は昨年よりも深みのある甘さと爽やかさを持ったお茶に仕上がりました。深みのある落ち着いた花果香とコクのある甘味と滋味が複雑にバランスよく、力強く繊細に感じられます。
もう1つの九曲紅梅は珍しい奇蘭種を使って作られたものです。
中国茶に詳しい方は奇蘭と聞いて不思議に思われると思います。奇蘭は福建省などにある青茶(烏龍茶)の茶樹品種です。この九曲紅梅に使われているのは台湾の奇蘭種です。かつて、この地でお茶作りをしようとした台湾人が持ち込み、植えたまま放置されている奇蘭の茶畑があり、その半野生化した茶畑から摘み取って作ったものがこの九曲紅梅です。
こちらも全て手作業で機械を使わずに作られています。
今年は春先に気温がなかなか上昇しなかったこともあり、非常に生産量が少なく入手が危ぶまれたほどでしたが、多くの方のご厚意で入手することができました。とても繊細な萌葉から作られているとは思えないほどの深みのある、華やかなオレンジの様なニュアンスを持った紅茶に仕上がっています。