福建省」カテゴリーアーカイブ

武夷山 御茶園

武夷山 御茶園

武夷山滞在中は主に午前中は各地の茶畑を見学させていただき、午後は工場で焙煎のブラッシュアップや色々な作り手さんを訪問したりと沢山の経験をさせていただきました。

こちらは御茶园(御茶園)と呼ばれる場所です。
御茶园というのは武夷山の皇帝専用の茶園で、宋、元、明代の皇家焙茶局が管理していた畑です。かつてはここで龙团凤饼(龍団凰餅)も作られ、現在も200種類以上の茶樹が植えられています。

武夷山 御茶園

武夷山市茶叶科学研究所(武夷山市茶葉科学研究所)の販売部門である武夷星茶業有限公司という会社が管理しています。この会社は武夷山はもちろん、中国各地や香港にも沢山の支店を持つ大きな会社ですので、ご存知のかたも多いと思います。
この御茶園で栽培された茶葉から作られた岩茶も販売されていました。(前回のお茶会でオマケで淹れさせていただいた小紅袍はこの御茶園のものです。)

武夷山 御茶園

御茶園全体はなだらかな傾斜になっています。茶畑は段々畑のように石垣で区分けされた中にあります。ブロックごとに植えられている茶樹の品種が異なっていて、ちょっとした品種博物館のようになっていました。

この敷地内には武夷星茶業の茶館もあります。観光シーズンではないこの時期は営業を行っていないようでしたが、スタッフの方に声をかけると中を見学させていただけます。中には茶館としてのスペースの他に昔の製茶道具や製茶風景の写真などが展示されています。


まだ残暑が厳しいですが、少しずつ秋の気配が感じられるようになってきました。先日入荷した紅茶が大変ご好評いただいております。

伝統 九曲紅梅
伝統 九曲紅梅

大湖山で栽培された伝統的な品種である鳩坑小葉種を使用し、昔ながらの製法を守って作られています。
とても技術の高い、現地では非常に有名な作り手が全て手作業で機械を使わずに作ったとても上質な九曲紅梅です。

もう1つの九曲紅梅は珍しい奇蘭種を使って作られたものです。

九曲紅梅 奇蘭
九曲紅梅 奇蘭

中国茶に詳しい方は奇蘭と聞いて不思議に思われると思います。
奇蘭は福建省などにある青茶(烏龍茶)の茶樹品種です。この九曲紅梅に使われているのは台湾の奇蘭種です。
かつて、この地でお茶作りをしようとした台湾人が持ち込み植えたまま放置されている奇蘭の茶畑があり、その半野生化した茶畑から摘み取って作ったものがこの九曲紅梅です。

奇蘭種の方はスポット的なお取り扱いになりますので追加入荷の予定は今のところありません。
生産量が少ないため、今後の輸入予定も未定です。

四川高山紅茶
四川高山紅茶

品切れが続き、ご迷惑をおかけしていた四川高山紅茶が入荷しました。
当店でも一番人気の四川高山紅茶です。

今年4月の四川省雅安大地震では製茶所も被害を受け、紅茶の生産も危ぶまれていましたが、何とか自分たちで製茶所を直しながら製茶を行ったそうです。(本格的な修復も製茶のシーズンが終わったため、ようやく始まったそうです。)

現在も当店では四川のお茶の売上げの一部を地震の義捐金として寄付させていただいております。
そのお礼として今回、茶業さんからの仕入れ価格を下げていただき、以前よりもお求め安いお値段でご提供できることになりました。

流香澗と大紅袍母樹

 流香澗

慧苑寺を過ぎた後も再び観光用ルートから外れて歩いていきます。まずは流香澗にある茶畑を目指していきます。

武夷山は非常に水に恵まれている場所です。至る所に清流が流れていて、霧も多く、気温が温暖(暑い位でしたが)、まさにお茶栽培には最適といった環境です。そんな環境に恵まれているので当然ながら湿度も高いのですが、ふと植えられているお茶の木に目をやるとこんな状態になっているのに気が付きました。

茶樹

苔がびっしりとお茶の木に生えています。

大きな木などでは見たことがありますが、流石に幹や枝の細いお茶の木でこのようにびっしりと苔が生えるというのは初めて見ました。それだけ温暖で湿度の高い環境にあるのだなと実感させられました。
確かに正岩地区の多くは土があっても豊富とは言えず、保水性も高いとは思えない土質です。これほど降雨や霧といった「水」に恵まれていなければ、険しい岩山での茶樹栽培はもっと厳しいものがあったと思います。環境というのは本当に重要で影響のある要素なんですね。

 流香澗

流香澗の茶畑に到着です。とても静かな谷間で、「清らか」というイメージがぴったりの場所でした。
谷間を抜ける風が心地よく、観光コースを殆ど歩いて来なかったために相当辛い思いをしてこの場所まで来たのですが、そんなこともどうでも良いと思えるほどに心地よく美しい場所です。

流香澗から山を1つ超えると大紅袍母樹があります。

大紅袍母樹

「大紅袍母樹」という言葉から大きな茶樹を連想される方が多いようですが、実際は大木という大きさの茶樹ではありません。決して太いとは言えない茶樹が6本密集して岩棚に生えています。3本、4本という説もありますが、武夷岩茶研究所の方のお話では6本ということでした。実際には近寄って確認することができませんので確認はできませんでしたが、現地の茶業さんや福建省の研究者の方の殆どが6本という認識のようです。

これらの茶樹は奇丹、北斗、雀舌といった品種から構成されています。奇丹、雀舌は現在流通している岩茶と同じ品種であると言われています。北斗は一般的に流通するものとは違い(北斗をもとに改良された北斗一号という品種です。)同じ品種のものは野生北斗と言う品種名で流通量としては少ないですが、他の場所でも栽培されています。

九龍窠

この大紅袍母樹のすぐ近く、九龍窠にも所有する茶畑があるとのことで見せていただきました。観光コースからすぐ脇は大手メーカーの茶畑になっていますが、その奥の険しい岩山の谷間に奇丹の茶畑があります。ここの奇丹は本当に素晴らしい深みのある味わいと香りで、先日のAfter Tasteさんで行ったお茶会のお土産として参加された方にはお渡しさせていただきました。


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流香澗 雀舌

武夷天心岩の岩壁に数本だけ生えている大紅袍母樹の1つに起源する岩茶で、ここ流香澗で作られた雀舌です。
雀舌は正岩茶区、半岩茶区、外山茶区を問わず数多く作られている品種ですが、流香澗で育てられたこの岩茶はそれらと同じ雀舌とは思えないほどに品格を感じる落ち着いた華やかさを持つ岩茶です。

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政和 野生白牡丹

白茶がこんなに香り高くて美味しかったんだと、リピートされる方も多い白牡丹です。
驚くほどに美味しい白茶です。

この野生白牡丹は山中にある野生茶樹から作られています。この地で白茶を作り続けている作り手が自家用にと山中に入って摘み取り、製茶したものを分けていただきました。貴重で大変手間のかかるお茶であるため、一般には流通させていないものですが、この作り手さんとは長年の友人でもあり、当店にならと譲っていただきました。
無農薬はもちろん、肥料すら施されていない純粋な野生茶です。

白茶は夏向きのお茶と言われますが、夏以外にも美味しいお茶です。特に味わいに深みのあるこの野生白牡丹は爽やかな紅茶のような美味しさを持っています。ちょっと一息つきたい時にゆっくりと味わっていただきたいお茶です。


10月のお茶会、既に多くの方にお申し込みいただいております。ありがとうございます!
残席僅かとなっておりますので、参加ご希望の方はお早めにご予約ください。

10月のお茶会は中国紅茶がテーマです。

様々なタイプ、希少な紅茶などを中心に、After Taste自慢のデザートと共にお楽しみください。

お茶についてのお話はもちろん、お茶を探して各国を回っているお茶の旅について、ご希望があれば美味しいお茶の淹れ方など、自由にみなさまと楽しみたいと思います。

日時 2013年10月14日(月曜・祝日)13時~15時
場所 Bistro&Bar After Taste
東京都新宿区新宿3-28-16 新宿コルネやまとビル5F
03-6273-2001
新宿駅 徒歩2分 / 新宿三丁目駅 A5出口 徒歩1分
料金 2500円(お茶3種以上・デザート・お土産つき)
ご予約 お席に限りがありますため、10月11日までにAfter Taste店舗までご予約ください
( 03-6273-2001)

おかげさまで満席となりました!

武夷山 慧苑茶区

鹰嘴岩

水簾洞から観光用の遊歩道を外れて様々な種類の茶畑を見せていただきました。
歩くのもやっとという位の山道、しかも岩山で傾斜もきつく、水の多い武夷山は足元も水で濡れて滑りやすく怖い場所もいくつかありました。
私たちは歩くのがやっとという道でしたが、茶業さんたちはここでチャノキを育て、お茶を摘み、製茶所まで運んでいく山道です。正岩茶、中でも良い茶区とされている場所の岩茶が高価なのは生産量の少なさはもちろんですが、こうした厳しい環境での作業ということもあるのだと実感させられました。

ここで一旦観光用遊歩道へ戻って先を進むことに。鷹嘴岩の横を通って先に進みます。

鷹嘴岩は武夷山の見どころとして有名ですが、この周囲の茶区も優秀で上質な茶葉が採れる場所として知られています。

武夷山 慧苑

綺麗な水が流れる川沿いを歩いていきます。
色々と環境問題が問いただされる中国ですが、武夷山は本当に水が綺麗な場所でした。この小川にも小さな魚が沢山泳いでいて、後日食事でいただきましたが、全く臭みもなく美味しい魚でした。

そのまま小川と茶畑を眺めながら歩いて行くと慧苑茶区に入っていきます。

慧苑寺

慧苑寺という古くからあるお寺の周囲が慧苑茶区です。
白鶏冠の発祥地と言われている慧苑寺がここになりますが、お寺自体は人の気配もなく古くからあるそのままの状態といった感じで静かにありました。
お寺の周囲ももちろん茶畑が広がっています。白鶏冠はそれほどでもなく、肉桂や水仙がここでも多く栽培されていました。

慧苑茶区

慧苑茶区の茶畑です。お茶に興味が無い人が見たら単なる荒れ地にされてしまいそうな茶畑です。
三坑两涧の1つ、慧苑坑は最上質の岩茶の産地として有名な場所です。地形が非常に厳しい場所も多く、ここでも歩くだけで精一杯といった山道の奥まで茶畑が広がってました。

ここでは肉桂と老欉水仙の茶畑を見学させていただきました。(この老欉水仙は年末か年明けにはご紹介させていただく予定です。)他にも樹齢100年を超えた老欉水仙も見せていただき、その老欉が持つ迫力に圧倒されました。


岩茶 慧苑肉桂
岩茶 慧苑肉桂

この慧苑で作られた岩茶の肉桂です。

慧苑坑という場所は正岩茶区の中心となる特別な地域です。その場所で育った武夷岩茶は特別な香気と味わいを持っています。正岩茶ならではの味わい、岩韻が素晴らしいこのお茶は、むせ返るような見事な花果香と質の良い岩茶特有の蜜蝋のような深み、ミネラル感、甘味がとても上品なバランスで同居しています。

岩茶本来の美味しさを知るのに最適な、最高のお手本のような武夷肉桂です。

残暑が厳しいこの時期にお勧めなのはフレッシュな普洱生茶です。普通に熱湯で淹れて楽しんでいただいても、アイスティーにしてもとても美味くお楽しみいただけます。

班盆 早春茶
班盆 早春茶

雲南省の有名な布朗山、その中にある老班章と程近い班盆という村で作られた2013年の普洱生茶です。今年に最初に摘み取られた茶葉で作られたお茶です。
完全に手作業で作られているため、良くある小沱茶の形ではなく、単純に丸めただけの形をしています。

先にご紹介させていただいている、班盆古樹純料谷花茶 2012年の妹分のようなお茶になります。

薄い金色の透明度が高いお茶は蜜のような、甘い樹液を連想するような香りと、ミネラル感のある深みのある甘さが心地よい美味しさです。とても柔らかく、出来たばかりの普洱生茶とは思えないような優しさは、班盆ならではの味わいです。

今はとてもフレッシュで美味しい味わいが楽しめますが、年月と共に緩やかに熟成もしていきます。段々と味に今とは違う深み、甘さが感じられるように変化し、5年、10年と経過したものは上質なブルゴーニュワインのような深みのある味わいになっていきます。
時間と共に変わっていく香気や味わいも楽しんでいただけるお茶です。

武夷山 水簾洞茶区

武夷山 水簾洞茶区

武夷山では茶畑の見学もさせていただきました。

さすが武夷山。いたるところが茶畑になっています。武夷山風景名勝区の中はこんな景色が広がっています。茶樹を植えることが出来る場所は全て茶畑にされているかような景色です。暫くの間、茶畑を眺めながら大きな岩山の間を歩いて行きます。

武夷山 水簾洞茶区

一番多く栽培されているのは、やはり水仙種のようです。肉桂も多く植えられています。
どれも農薬を使用していないので葉は虫食いだらけですが、実際に製茶で使用する部分は新たに伸びた新芽の部分のみなので、それ以外の部分の虫の被害は気にしないようです。実際、歩いていて手のひらサイズの大きな毛虫や日本ではあまり見かけないような大きな鮮やかな色合のトカゲなどにも遭遇しました。

水帘洞(水簾洞)

山間にちょっとした開けた空間が現れます。 水帘洞(水簾洞)です。
遥か上の方から水が落ちてくる滝になっています。その下にあるのは水帘寺(水簾寺)というお寺です。大きさが実感していただければ良いのですが、実際はそのお寺も山(滝)の途中にあります。あまりにも高低差がありすぎて写真に収まりきりません。

武夷山 水簾洞茶区

この水簾洞にも茶畑があり、日本ではあまり知られていませんが、この付近は上質な茶葉が産出される茶区として知られています。
一番多いのはここでも水仙ですが、他にも様々な品種が植えられていて、一般の観光客が立ち入らないように柵で区切っていたり、観光ルートである遊歩道から外れた細い山道を通って行った先にあります。


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流香澗 雀舌

武夷天心岩の岩壁に数本だけ生えている大紅袍母樹の1つに起源する岩茶です。
慧苑坑と同じく三坑両澗と呼ばれる茶区の1つ、流香澗で作られた雀舌です。
雀舌は正岩茶区、半岩茶区、外山茶区を問わず数多く作られている品種ですが、流香澗で育てられたこの岩茶はそれらと同じ雀舌とは思えないほどに品格を感じる落ち着いた華やかさを持つ岩茶です。

大陸だけでなく、台湾のお茶もお勧めです。

凍頂烏龍茶 2013年春茶
凍頂烏龍茶 2013年春茶

鈴茶堂がイチオシの作り手による凍頂烏龍茶です。
近年主流の焙煎の浅いタイプではなく伝統的な製法を守って作られた凍頂烏龍茶になります。

最近は本来の産地以外で作られたものなども多く流通していますが、この凍頂烏龍茶は代々、伝統的な製法を頑なに守って作り続けています。その味わいはまさに本来の凍頂烏龍茶そのものです。

この作り手の凍頂烏龍茶には実質的な賞味期限はありません。
非常に製茶技術と焙煎技術が高いため一般的な烏龍茶よりも水分量が少なく、年月を経ることで後熟成が進み、柔らかさや味の深みがどんどん増してきます。湿度と匂い移り、高温を避けて保存していただければ10年と長く楽しめるものです。

今回はその後熟成の違いも実感していただこうと思い、とてもお得なビンテージ・収穫時期違いのセットをご用意しました。2012年の春茶の在庫が少なくなっているため、数を多くご用意できませんでしたが、是非この機会にその味わいの違いを体験していただければと思います。どうぞ好みの味わいを見つけてください。

凍頂烏龍茶 テイスティングセット

武夷岩茶研究所 工場訪問(審評室と毛茶加工)

武夷岩茶研究所 工場

焙煎室の次は毛茶加工の部屋を見学しました。毛茶というのは日本語で言う荒茶のことで、武夷岩茶の場合は乾燥工程まで終了した、最終焙煎前の状態のお茶を指します。

毛茶はそのまま焙煎すれば良いという訳ではありません。最終焙煎を行う前にも様々な工程があります。

人の手と目で毛茶に付いている茎を取り除いています。同時に異物やゴミなどもこの工程で取り除かれます。茶葉の状態が分かりやすいように黒い板を下して1つ1つ確認して作業をしていきます。気が遠くなるような作業です。

武夷岩茶研究所 工場

この工場では9人でこの作業を行っています。訪問したこの時期はどの工場も最終焙煎工程に入っているため、みなさん時間を見つけてはこの作業を行っているようで、街中でこの光景が見られます。工場の軒先や道端でも行われています。(当店がお世話になっている工場では衛生管理の都合上、写真の専用作業室でしかこの作業は行いません。)

この工程で出た茎もまた美味しく楽しめます。「武夷岩茶」として販売されることはありませんが、茎茶として販売されるそうです。日本へも輸出されているそうで、もしかしたら茎茶の中には牛蘭坑肉桂の茎といったものも混じっているのかもしれません。
余談ですが、鉄観音の茎も同じように茎茶として販売されますが、人気があるのはお茶枕にすることです。流石に岩茶の茎は長くて大きいので枕に加工するのは難しいようです。

岩茶工場 篩分機

この機械は篩分機です。毛茶を茶葉の大きさで篩い分けします。

向かって右側から茶葉を入れて動かします。茶葉は大きさによって篩い分けられて、赤いレバーの下から出てきます。(実際に動かす時にはレバーの下に袋をセットします。)右から左にかけてだんだん大きな茶葉に篩い分けられていきます。
こうして茶葉の大きさを揃えてから再度人の目と手による最終確認と篩い分けが行われます。この最終確認工程は殆どの工場では行われませんが、この工場では必ず行っています。

武夷岩茶工場

こうして丁寧に加工された毛茶は最終焙煎工程に入ります。毛茶の状態になってからも、とても手間のかかる加工と確認を行っています。

まずは焙煎の方向性を決めるために審評室で毛茶の審評を行います。このお茶をどの程度焙煎するべきか、それともまだ寝かせて最終焙煎をいつにするかなどを決めます。

焙煎を終えた岩茶もまた同じく審評を行います。審評は品質責任者が中心になって行いますが、焙煎を行う工場長も必ず一緒に行います。
滞在中は基本的にこの審評室と焙煎室にいましたが、こんなにたくさんの岩茶を飲んだのは初めてという位、たくさんの茶葉を確認させていただきました。普段から審評を行っている私たちも圧倒される数の岩茶でした。


中国浙江省を代表する紅茶として知られる九曲紅梅が入荷しました。

伝統 九曲紅梅
伝統 九曲紅梅

この紅茶は福建省北部の武夷山付近から太平天国の乱の混乱を避けて浙江省のこの地へ湖埠へ移住してきた人々が作り出した紅茶と言われ、その名にある九曲は武夷山にある九曲溪から名づけられたものと言われます。

この紅茶の伝統的な茶樹品種は在来種である鳩坑小葉種ですが、実際には様々な品種が使われています。龍井茶の品種が使われているとも言われますが、このお茶は大湖山で栽培された伝統的な鳩坑小葉種のみを使って作られています。
とても技術の高い現地では非常に有名な作り手が、全て手作業で機械を使わずに作ったとても上質な九曲紅梅です。

もう1つの九曲紅梅は珍しい奇蘭種を使って作られたものです。

九曲紅梅 奇蘭
九曲紅梅 奇蘭

中国茶に詳しい方は奇蘭と聞いて不思議に思われると思います。奇蘭は福建省などにある青茶(烏龍茶)の茶樹品種です。この九曲紅梅に使われているのは台湾の奇蘭種です。
かつて、この地でお茶作りをしようとした台湾人が持ち込み、植えたまま放置されている奇蘭の茶畑があり、その半野生化した茶畑から摘み取って作ったものがこの九曲紅梅です。

こちらも全て手作業で機械を使わずに作られています。

四川高山紅茶
四川高山紅茶

品切れが続き、ご迷惑をおかけしていた四川高山紅茶が入荷しました。
当店でも一番人気の四川高山紅茶です。

今年4月の四川省雅安大地震では製茶所も被害を受け、紅茶の生産も危ぶまれていましたが、何とか自分たちで製茶所を直しながら製茶を行ったそうです。(本格的な修復は製茶が一段落したオフシーズンに行うとのことです)

現在も当店では四川のお茶の売上げの一部を地震の義捐金として寄付させていただいております。
そのお礼として今回、茶業さんからの仕入れ価格を下げていただき、以前よりもお求め安いお値段でご提供できることになりました。

武夷岩茶研究所 工場訪問(焙煎室)

武夷岩茶研究所 工場

武夷山駅から市内へ向かい、地元の食堂で朝ごはんをいただいた後は、すぐに武夷岩茶研究所の工場を訪問しました。ここから数日間、この工場を拠点とさせていただき、武夷山の茶畑などの見学や焙煎技術のブラッシュアップをさせていただきました。

工場では丁度最後の火入れ工程が行われている最中で、焙煎室はフル回転状態です。衛生面にとても配慮していて、ゴミひとつ落ちていない非常に綺麗な焙煎室です。

火入れの工程はこの工場長が自ら行います。とても大事な工程であるため、決して他の人には任せないというこだわりようで、サウナのような室温の焙煎室でずっと作業しています。

武夷岩茶研究所 工場

火入れは全て炭火を使用しています。
これは炭火をそのまま使用してしまうと火力が強すぎてしまうため、炭の上に灰を被せて調節しています。

炭火を使った火入れはとても手間がかかるため、最近は電気式の焙煎機を使用するところが殆どになってきてしまいました。炭火を使った火入れを行っている工場は年々減ってしまい、今では少数派になってしまったとか。
この工場では今も炭火にこだわり、上質な武夷岩茶に至っては炭を作るところから行っています。

武夷岩茶研究所 工場

火入れは荒茶の状態にもよりますが、数時間行われます。状態をみながら火入れを行った岩茶はその度に評茶を繰り返し、評茶責任者と工場長が納得するまで火入れを行っていきます。中には暫く寝かせて(後熟成)させてから再度火入れを行っていくものも多く、数ヶ月から数年かかるものもあります。

武夷岩茶は火入れの技術で全く別のお茶のように変化するお茶ですが、この工場長が火入れを行った岩茶は本当に美味しく、深みのあるお茶になります。数々の岩茶を飲んできた私たちも、この工場長が作った岩茶は別格の美味しさを持ったお茶だと思っています。それにはこうした努力と譲らないこだわりがありました。


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青獅子岩 金牡丹

武夷岩茶の中でも最もお勧めはこの青獅子岩 金牡丹です。

金牡丹は福建省農科院研究所が作出した比較的新しい品種です。非常に香り高く、味わいも良いことから評価の高い品種ではあるものの、栽培量が極めて少なく、産地である武夷山はまだしも、中国でも金牡丹という品種を知らない人の方が圧倒的に多い希少な岩茶です。
その中でも青獅子岩と呼ばれる山深い場所で作られている金牡丹です。この青獅子岩で作られる岩茶は最高の味わい、香り、岩韻を備えています。同じ品種の岩茶でも他の場所で作られた岩茶とは全く別物と言って良いほど味わいと香りの深さがあります。
産地でもまず青獅子岩の金牡丹に出会えることはありません。

慧苑坑 鉄羅漢
慧苑坑 铁罗汉(鉄羅漢)

四大名欉として知られる鉄羅漢です。
本来の生産地は福建省武夷山のなかでも慧苑坑という場所ですが、現在では生産される鉄羅漢の殆どが慧苑坑以外の場所で栽培されています。
慧苑坑とは三坑両澗と呼ばれる、ワインで言うところのグランクリュ畑。その正岩茶区の中心となる地域で作られた素晴らしい岩韻を持つ鉄羅漢です。鉄羅漢という岩茶が本当はこんなに美味しいお茶だったのかと実感していただけると思います。

武夷山駅到着

Z59/Z58 福建省福州行き

軟臥車両の入り口に立っている女性の車掌さんに切符を見せて乗車です。
軟臥は寝台車両の中でもグリーン車のような扱いで、複数の車掌さんが常にスタンバイしていて検札からシーツの取替え、掃除などを忙しく担当していました。おかげでトイレや洗面所も綺麗で想像していた以上に快適に過ごすことができました。

Z59/Z58 福建省福州行き

指定されている軟臥のコンパートメントに向かいます。軟臥は1室4ベッドのコンパートメントになっていて、使い捨てスリッパなどの用意などもあります。ベッドは2段ベッドになっています。コンパートメントには扉があり、鍵もかかるようになっていますが、今回は満席だったようで私たちと別の乗客も1人同じコンパートメントであったため、鍵を使用することはありませんでした。

中国らしいと言えばお湯がいつでも無料でもらえることです。おかげで乗車中はずっとお茶を飲んで過ごすことができました。
また、日本には今はない食堂車も健在です。食事時は満席になってしまうほどの人気で、実際に食事も美味しかったです。

河北省付近

北京を出てしばらくすると河北省に入ります。広々とした乾燥気味の大地が続く華北地方らしい景色が続きます。
お茶を飲みながら景色を眺めて、お茶について話をしながら過ごします。

江西省

翌朝、日が昇って周囲が見えるようになると景色が見違えるように変わっています。
これは江西省付近の景色ですが、山が多く華北のような見渡すような平地が少ない感じです。水が豊かで小麦畑から水田に変わっています。一晩で景色の様相が一変していました。

武夷山駅

列車は2時間ほど遅れて武夷山駅に到着しました。
6月というのに気温は夏そのもの。湿度の多さも出発した北京とは全く違い、湿度で空気が重い感じがするほど。
霧の多さをいきなり実感するような天気で、お茶処というのが実感できます。

武夷山駅

北京西駅を出発して17時間。1700kmの距離を移動しました。

改札を出た所で現地にいる迎えにきてくれた武夷山岩茶研究所の方と再会。
武夷山駅は武夷山の街の中心部から少し離れた場所にあります。迎えの車に乗り込んで、早速市内へ向かいます。


この武夷山へ旅の途中、ずっと楽しんでいたお茶です。

基本的に大陸を旅する時は台湾のお茶を、台湾を旅する時には大陸のお茶を持っていきます。この時は仕上がったばかりの溪頭高山茶を持っていました。
普段は岩茶しか飲まない武夷岩茶研究所の人たちも、これは美味しい!譲ってもらうことはできますか?と聞かれたほどに美味しく上質な高山茶です。暑い中でも爽やかに楽しめます。もちろんアイスティーや水出しでもお勧めです。

溪頭 高山茶
溪頭 高山茶

近年主流の醗酵の浅いタイプではなく、しっかりと醗酵を行う製法で作られた溪頭高山茶を後熟成していたものです。甘い桜餅のような香りが心地よく、さらっと淹れていただければ清らかな高山気も楽しむことができます。甘く旨みの深い味わいで、雑味がないため、さっと軽く入れると高山気をしっかり楽しめるお茶に、じっくり淹れると旨みの強いしっかりと味わえるお茶と、淹れ方を変えて楽しめます。

このお茶はもしお手持ちに別の高山茶があれば是非茶葉を比べていただきたいと思うほどに丁寧に作られています。岩茶研究所の作り手さんたちも驚くほどに製茶技術が高いお茶です。
1つ1つの茶葉がとても小さく丸められていて、一般的な高山茶の半分ほどの大きさです。

溪頭 焙香高山茶
溪頭 焙香高山茶

標高1100m前後の茶畑から作られた高山茶を伝統的な凍頂烏龍茶の製法で作った焙香高山茶です。2012年の春茶を後熟成させていました。
この焙香高山茶の特徴はその甘い香りと味わいです。先にご紹介した溪頭高山茶と同じ地域、茶樹から作られたとは思えないほどに違うお茶に仕上がっています。溪頭高山茶が爽やかな甘さを持っているのに対して、この焙香高山茶は濃厚な深みのある甘味と見事な蜜香があります。
岩茶研究所の作り手さんに一番人気だったのはこの焙香高山茶でした。

お得な溪頭 高山茶セットもございます。

7月、8月中にご注文いただいた方には、美味しい水出し・アイスティーの作り方をお付けしてお届けしています。(黒茶のみのご注文は除きます。ただし、黒茶の保管方法・飲み方をお付けしております。)

北京から武夷山へ

北京西駅

6月に武夷岩茶の産地、福建省武夷山を訪問してきました。

丁度、この時期は武夷岩茶の最終焙煎工程がはじまった時期です。いつもお世話になっている武夷山岩茶研究所の方は春先からずっと武夷山で製茶を行なっていますが、他のスタッフの方も焙煎工程ではその出来上がりを確認するために武夷山へ向かいます。そのスタッフの方と北京で合流してから武夷山を目指しました。

北京から武夷山へは飛行機でも行くことができますが、私たちは寝台列車で向かいました。北京西駅から福建省福州行きの寝台列車で15時間、1763キロの大移動です。

中国のターミナル駅はとても大きいです。ちょっとした空港並の大きさで、セキュリティも厳しく、駅の中に入ることができるのは切符を持っている人のみ。荷物のセキュリティチェックと切符、身分証明書(外国人はパスポート)をチェックしてようやく駅の中に入ることができます。

北京西駅

広い駅の中、自分の乗車する列車の乗車口を探します。
見つけた福州行きの長距離列車の待合所はこんな状態になっていました。凄い人ですが、他の列車との共同待合所になっています。とはいえ、日本の列車よりもずっと1列車の車両の数が多いので、かなりの乗客が列車の発車を待っています。

おやつを食べる人、グループでトランプをはじめる人たち、中には修学旅行生と思われる団体も。列車を待つ人の間を縫うように折りたたみの椅子を売る人など、人々のパワーに圧倒されます。なかなか日本ではこういった光景は無いですよね。

北京西駅

時間がくると待合所のゲートが開いてホームへ移動します。
ホームは待合所のある場所よりもかなり低い位置にあるので、ホームへ降りるエスカレーターは高所恐怖症には少し怖い位の高低差です。日本にはまず無い設計で、北京西駅に限ったことではありませんが(上海などのターミナル駅も同様です)、先まで見渡せる視野の広さと長い列車が外国なんだなと実感させてくれます。

Z59

乗車した北京西駅から福建省福州まで走るZ59という列車です。

私たちは軟臥という日本で言うところのA寝台です。この列車では一番良い寝台席です。他にも硬臥(日本で言うB寝台)や硬座(寝台ベッド無しの座席のみ)もありました。
かつては価格の高い軟臥は敬遠されて硬座や硬臥の方が人気があると言われていましたが、最近は収入も向上してきて軟臥が一番人気があるのだそうです。

午後3時過ぎ、定刻の発車です。翌朝の6時過ぎに武夷山到着予定になっています。


猛暑が続いていますが、そんな暑さを乗り切る白茶がお勧めです。
白茶は去熱作用、体内の余分な熱を取り除いてくれると言われています。その上、美肌作用や抗酸化作用もあるとされていて、集中して飲んでいると、肌がモチモチになるだけでなく、脂浮きも収まってきたりも。
実は私たちもそこまで期待していなかったので驚きです。(薬ではありませんから・・・)

夜寝る前に野生白牡丹、昼間は雲南白茶をゴクゴクと飲んでいますが、このパターンが一番効果が実感できるような気がします。
(薬品ではありませんので効果の程は個人差があります。また、カフェインを含んでおりますので、就寝前の飲用は眠りにくくなることも考えられます。体調や体質を踏まえてお楽しみください。)

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政和 野生白牡丹

白茶がこんなに香り高くて美味しかったんだと、リピートされる方も多い白牡丹です。
驚くほどに美味しい白茶です。

この野生白牡丹は山中にある野生茶樹から作られています。この地で白茶を作り続けている作り手が自家用にと山中に入って摘み取り、製茶したものを分けていただきました。貴重で大変手間のかかるお茶であるため、一般には流通させていないものですが、この作り手さんとは長年の友人でもあり、当店にならと譲っていただきました。
無農薬はもちろん、肥料すら施されていない純粋な野生茶です。

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思芽 雲南白茶

この雲南白茶は雲南省南部の思茅の標高1800m付近にある茶園で2013年3月中旬に摘み取られました。無農薬栽培の茶樹から丁寧に摘み取り、製茶されています。ビロードのような白毫が非常に美しい茶葉です。
雲南大葉種の持つ深い甘さと、夏向きの爽やかな紅茶のような風味、プーアル生茶のようなミネラル感を持つ深みのある味わいです。

思芽に住む少数民族の作り手さんが丁寧に作った白茶です。
お求めやすいお値段でコストパフォーマンスも良く、ゴクゴク飲むのにお勧めです。

8月中にご注文いただいた方には、美味しい水出し・アイスティーの作り方をお付けしてお届けしています。(黒茶のみのご注文は除きます。ただし、黒茶の保管方法・飲み方をお付けしております。)