早朝からの製茶

安渓感徳

福建省安渓の感徳の山の中にある村に泊めていただいた翌日は早朝から製茶を見せていただきました。
前日まで曇りがちな空も、この日は綺麗に晴れ上がり、山の中の冷たい気温に太陽の光が熱を帯びているのが感じられます。やはり福建省は太陽が強いですね。この太陽の強さが美味しい鉄観音を作り出します。
5時頃から日が昇り、日の出とともに村も活気がでてきます。早朝から畑にでる村人も多く見かけます。この村も高齢化が進んでいるようで、畑で元気に作業をする村人の中には90歳を超えているという人も珍しくありません。

安渓感徳

山肌に張り付くように建つ製茶場に息を切らしながら朝早くからお邪魔させていただきます。ちょっとした山登りのような傾斜で、ご覧の通り、本当に平地の少ない山間の小さな村です。
村の半分以上は製茶に関わる仕事をしていますが、携わっている村人の殆どは高齢者です。同じ鉄観音でも平地の大規模な茶畑や大きな工場のあるような地域であればともかく、このような山間の傾斜のきつい小さな茶畑で、最低限の製茶機械で家族で行うような茶農家では、鉄観音といえども生産量に大きな違いがあります。裕福な暮らしをできるほど生産することが出来ないというのが現状で、若い人の殆どは茶業を辞めて街へ働きに出てしまいます。

安渓感徳

まだ6時を過ぎた頃だというのに、製茶場ではフル回転で製茶が行われています。おばあちゃんやおじいちゃんが険しい崖のような茶畑で1つ1つ摘んできた大切な茶葉を1つとも無駄にしないように、真剣に製茶が続けられています。聞けば昨夜から殆ど寝ていないとのこと。それでも和気あいあいと家族ぐるみで協力しながら作業を続けています。見ている以上に重労働ですが笑顔。快く質問にも答えてくださいました。
工程毎に頻繁に試飲を繰り返し、意見も活発に出されます。それらの意見もしっかり聞いた上で家長である作り手がその程度を決めていきます。

安渓感徳

5月中旬の訪問時は主に清香系の製茶が行われています。いわゆる青い鉄観音です。下旬になると濃香系の製茶がはじまります。茶色い焙煎が行われている鉄観音が清香系です。この濃香系の鉄観音は近年はあまり作られることのなくなってしまった鉄観音ですが、この茶農家では昔から変わらず作り続けています。濃香系を作ることを止めて久しい茶農家や茶業では清香系の製茶しかできなくなってしまっている、濃香系の製茶情報を喪失してしまっていることが多く見られます。そのため、良く市場に出回っている濃香系は売れ残った清香系や品質の低い清香系を焙煎して「濃香系」と言って販売しています。これでは濃香系の美味しさが分かりません。本来の濃香系は茶葉の成長度合い、発酵の度合いも違います。濃香系を作るためには茶葉の状態が成長しすぎず、でもしっかりと成分を保っていること。そして毛茶(荒茶)の状態から休ませ、6月頃から茶葉を休ませながら炭火で焙煎を行っていきます。
2016年は雨が多く、この茶農家では残念ながら濃香系の製茶を断念してしまいました。翌月に再度訪問して焙煎も見せていただく約束をしていたのですが、来年になりそうです。とはいえ良いお茶が作れないならば妥協せず製茶しないという決断は消費者として心強く、嬉しいです。その分の収入が無くなる訳ですから、茶農家にとっては相当な決断です。品質の低いお茶は作りたくないというその姿勢は応援していきたいと思っています。


中茶牌 藍印鉄餅 春尖 2006
中茶牌 藍印鉄餅 春尖 2006

この価格帯では近年稀にみるほどの美味しく上質な普洱生茶です。
価格がお手頃ということもありますが、何より驚く位にとても美味しいということ。
特に樟香系の香りがお好きな方にはぜひ試していただきたいと思います。

中茶牌の鉄餅の歴史は古く、1950年代まで遡ります。
元々はロシアなどの輸出向けに鉄の型を使って整形する製法で作られていた普洱生茶です。通常、石と布を使って整形する普洱茶ですが、この鉄の型を使うことで独特の風味が生まれ、当時、初期生産のものは今や手の届かないほどに高価なお茶として知られています。この藍印鉄餅は2006年に作られた、その鉄餅の復刻版です。

雲南中茶公司による、この藍印鉄餅は春尖、早春の清明節前に1芯3葉で摘み取られた上質な茶葉を使用して2006年に作られました。出庫直後から広州乾倉で、ほぼ10年間熟成を行っています。

広州乾倉の中でも非常に腕の良い茶商によって熟成されているせいか、高く見事と言えるほどの綺麗な樟香が楽しめます。心地よい柔らかい収斂味、しっかりと、そして長く続く回甘とのバランスが本当に素晴らしい生茶に育っています。生茶の強さはすっかり影を潜めて、柔らかく、優しく、それでいて力強い、まさに普洱茶熟成のお手本のように育っています。

通常であれば倉熟成を行い、ここまで状態が良く、香り高い普洱茶はそれなりに高価になります。今回、黒茶専門家として大陸ではとても高名な師のおかげで現地と殆ど変らない価格でご提供できることになりました。とても美味しく、そして本当におすすめできる普洱茶です。

※1筒(7枚)でご購入をご希望の場合はお問い合わせください。(45,500円・税抜)