お茶の旅」カテゴリーアーカイブ

普洱生茶の製茶

易武

友人の易武天能茶庄での製茶をご紹介いたします。

この易武天能茶庄では昔からの製法で製茶を行っています。小さな茶農家の多い易武では比較的中規模な製茶場ですが、他の地域に比べるとかなり小さな、家族・親戚で運営する製茶場です。名作り手と名高い何能天老師が監修しながら(かなりご高齢のため現在は直接製茶を行っていません)、その跡を継いだ友人が中心となってお茶を作っています。製茶場には揉捻機はもちろん、篩分機も乾燥機もありません。基本的に手工、手作りでのお茶作りにこだわっています。

殺青工程もこうした窯で行います。現在、殆どの製茶場、茶農家においても殺青機を使用していますが、ここでは薪の火力による殺青にこだわります。ガスや電気では味わい、香りが変わってしまうとのこと。薪による殺青は殺青機と違い製茶技術が要求される難しい作業です。

易武

薪の原料にもこだわります。基本的には易武の山で取れた木材を使用しますが、原料の茶葉の状態、仕上がりのイメージにあわせて木材の種類を変えていくのだとか。

薪による殺青は人の手によるところが大きいため、どうしても殺青にムラが出ます。このムラによる揺らぎがこうしたお茶の美味しさを作り出していくと考えます。大手製茶場のお茶は機械を使用して殺青も均一に行われますが、やはりどこか均一的になりがちです。薪による殺青は火力の調節なども加わり大変な作業ですが、その揺らぎが味わいにちょっとした変化をもたらしたり、香りに高さを加えたり、味わいに深みを与えていきます。また熟練した作り手が実際に手に触れながら、その目で確認しながら行う製茶は機械の製茶ではできません。

易武

これは鮮葉を萎凋しているところです。最近では普洱茶でも萎凋を行うことは時間や手間がかかるので行われなくなりつつあります。しかしながら、萎凋を行うことで香りや味わいが格段に良くなることは事実です。生産性を考慮する場合に萎凋工程を短縮、あるいは無くしてしまうという傾向が強いのですが、ここではしっかりと萎凋を行います。作るお茶のイメージによっては醗酵まで行うこともあるそうです。

山深い場所にあるとはいえ、雲南、西双版納の日ざしは強く、萎凋は基本的に日陰で行います。青空の下ではあっという間に鮮葉が焼けてしまうのだとか。
ここは作り手でもある友人作り手の奥様が頻繁に香りや茶葉の状態を確認しながら萎凋を進めていきます。

易武

野外ではできたばかりの毛茶(荒茶)を乾燥させています。普洱茶は晒青緑茶を元に作られています。
(晒青緑茶を天日で殺青すると誤った説明を見かけますが、晒青緑茶は乾燥工程が天日という意味です。)
この乾燥工程も最近では乾燥室、乾燥機を使用することが増えていますが、ここではそのような設備はなく、全て天候次第、太陽の光を使用して行っています。
普洱茶は麹菌による後発酵が行われるお茶であるため、乾燥室や乾燥機を使う場合でもかなり低温で時間をかけて行います。(高温で乾燥を行うと茶葉表面にいる麹菌が殺菌されてしまうため)それでも天日による乾燥よりもずっと楽で安定しているので普及しています。それもそのはず、太陽の光で乾燥させていると言っても頻繁に茶葉の状態を確認し、天地を返して均一に日の光があたるように調整しながら行っています。なので休む暇もないという状態です。西双版納の日ざしの強さは乾燥工程でも同様で、日差しが強すぎたり、茶葉の乾燥度合いによっては木陰に移動させたり、日よけを用意したりと本当に大変な作業です。


能天源七子餅茶 易武正山古樹 古式手工 2014
能天源七子餅茶 易武正山古樹 古式手工 2014

易武天能茶庄の乾倉で3年間、大切に熟成させています。

使用する茶葉は易武の山深い場所にある自然のままに育った古茶樹、茶葉の殺青(発酵を止める工程)もガスではなく薪を使い、製茶機械を可能な限り使用しない昔ながらの製法にこだわっています。もちろん、圧延工程も昔ながらの石磨圧延です。

非常に高く綺麗な、そして長く続く見事な、易武の人たちの言うところの「蘭花香」が感じられます。ちょうど熟成が一段落したところで、本来持っている香り高さに加えて蜜のような甘い香りも深く出ています。易武らしい甘味は深くしっとりと、優しいミネラル感とあわせて複雑な、それでいて喉に心地よい仕上がりになっています。3年間熟成させていますが、易武での徹底した乾倉管理ということもあり、いわゆる陳香は感じられません。

飲み終えた時にはぜひ葉底、茶殻もご鑑賞ください。大変に丁寧に作られた綺麗な茶葉です。


自家栽培陳皮普洱茶
自家栽培陳皮普洱茶

先日の中国出張の際に長く家族ぐるみでお付き合いしている友人茶商から自家栽培した陳皮を使った陳皮普洱茶をいただきました。帰国後に改めて飲んでみたところ、とても優しく美味しいお茶であることに驚き、ぜひ当店でもご紹介させて欲しいとお願いしたところ特別に作っていただけることになりました。

友人の故郷、浙江省で自家用に栽培された無農薬の陳皮を贅沢に使った陳皮普洱茶です。

陳皮は友人茶商の親戚が特別に栽培しているマンダリンオレンジ(陳皮の原料)を使用しています。この農家では主に佛手柑を栽培していますが自家および親戚内での消費用として無農薬・有機栽培で陳皮も作っています。
普洱茶は熟茶に定評のある大益のものを使用しています。普洱茶の専門家でもある友人のセレクトで癖のない飲みやすい美味しい普洱茶を選んでいます。

自家栽培陳皮普洱茶

元々は自家用のお茶として作られているため、ご予約分のみの製造、ご紹介となります。

一般的な陳皮普洱茶のような強い香りはなく、優しいほっとするような柑橘の香りが特徴的です。普洱茶は癖のない上質な熟茶を使用しているため、飲みやすく、さらっとした甘味が感じられます。カフェインが殆ど無いお茶でもありますのでお休み前のお茶としてもおすすめです。また、寒い季節の健康管理に取り入れるのもおすすめです。一般的な陳皮普洱茶や青柑茶の香りが強すぎて苦手という方にもおすすめいたします。

ご予約は1月28日24:00までとさせていただきます。
陳皮の量に限りがありますため、予定数を超えた場合はご予約を早期終了させていただきます。
発送は入荷後、2月10日頃を予定しております。

易武の風景

易武

易武郷自体もかなり山奥といった場所にありますが、易武茶山全体からみれば入り口となる場所です。西双版納の茶産地の中でも易武は資本の大きい企業とも言えるような茶業さんが少ないのですが、数件ある大きな茶業さんはこの易武郷にあります。
易武郷から少し外れると易武古鎮と呼ばれる昔からの集落があります。易武郷は大きな茶業さんや製茶の時期は賑わうホテルが数件、その他は人々の日常生活に必要な食材や日用品の市場や商店、食堂などがありますが、易武古鎮は住居かとても小さな茶業さんがあります。

古鎮の茶業さんでは易武茶山のもっと奥にある麻黑寨や曼撒寨などいった場所などから持ち込んできた茶葉を製茶しています。茶葉は鮮葉の場合もあれば、茶農家さんから買い付けた毛茶(荒茶)など様々です。実際、とても小さな茶業さんが多く、製茶技術のレベルもバラバラです。餅茶の成形を行うことのできる設備や技術を持つ製茶場は少数で、製茶場としての認可を受けていない茶業さんも少なくありません。昔ながらといってしまえばそれまでですが、今後は衛生管理や原材料となる茶葉のトレースなども課題となってくると思いますが税金の問題もあり、意識や知識の向上といった部分は、まだ時間がかかるのかもしれません。(当店では認可を受けていない製茶場、茶農家からの仕入れは行っていません。)

易武

普洱茶は日光の力を借りて作られます。この時期の易武は至る所で茶葉を乾燥させている光景が見られます。萎凋を行っているもの、揉捻が終わって乾燥工程にあるもの、餅茶の成形が終わり固形茶の乾燥工程にあるものなど様々です。勐海(モウ海)などでは比較的機械化されている固形茶の乾燥工程でも易武では殆どが日光を使って乾燥させています。設備がないということもありますが、日光を使った方がより味わいが深くなると易武の人たちは口にします。自然の光だけに強すぎる日は影を作ってその光を弱めたり、弱い日は太陽が出てくるまでじっと待っていたり、お茶を作る仕事もなかなか大変です。

こうして茶葉を並べて萎凋や乾燥を行っている間にも頻繁に試飲します。この茶葉はどの程度の強さで、萎凋の程度はどの程度がいいのか、陽の光が強すぎていないかなどを確認しながら製茶を進めていきます。のどかな風景に見えますが、春の製茶時期は静かな戦いの場です。最後まで全ての工程でベストを尽くすべく徹底的に茶葉の状態を確認しています。特に鮮葉に近い状態の茶葉は製品茶の状態のお茶よりもはるかに刺激が強く胃にかなり負担がかかります。舌が鈍るので茶菓子などを一緒に食べるということもできず、作り手さんたちの胃もこの時期は大変です。

易武

これは友人の親戚が営む製茶場です。同じ古鎮の中にあり、ここでも餅茶の成形を行うことの出来る数少ない製茶場です。散茶や毛茶(荒茶)と違い餅茶はその製品としての普洱茶がどこの茶業から出品されたものなのかなどを明記する必要があります。製品のトレースができなければ出荷できないに等しい状態です。(私製茶などは除きます)現在は中国国内でもそういった品質に対する姿勢が厳しくなってきていることもあり、彼らの製茶場は非常に衛生的に管理されています。製茶場の敷地内は野外でもゴミ1つ落ちていない状態が普通ですし、室内に至っては更に徹底されています。日本も含め世界的にも非常に衛生的、綺麗にしていることに驚かされます。
もちろん、その反対の製茶場もあります。正直な所、ここでつくられたお茶は飲みたくないと思うようなこともあります。産地を訪れ、生産現場を確認、信頼できる人から譲っていただくというのはとても大事なことだと改めて実感しました。


中茶牌 藍印鉄餅 春尖 2006
中茶牌 藍印鉄餅 春尖 2006

中茶牌の鉄餅の歴史は古く、1950年代まで遡ります。
元々はロシアなどの輸出向けに鉄の型を使って整形する製法で作られていた普洱生茶です。通常、石と布を使って整形する普洱茶ですが、この鉄の型を使うことで独特の風味が生まれ、当時、初期生産のものは今や手の届かないほどに高価なお茶として知られています。この藍印鉄餅は2006年に作られた、その鉄餅の復刻版です。

雲南中茶公司による、この藍印鉄餅は春尖、早春の清明節前に1芯3葉で摘み取られた上質な茶葉を使用して2006年に作られました。出庫直後から広州乾倉で、ほぼ10年間熟成を行っています。広東入倉ですが土臭さなどは感じられません。

広州乾倉の中でも非常に腕の良い茶商によって熟成されているせいか、高く見事と言えるほどの綺麗な樟香が楽しめます。心地よい柔らかい収斂味、しっかりと、そして長く続く回甘とのバランスが本当に素晴らしい生茶に育っています。生茶の強さはすっかり影を潜めて、柔らかく、優しく、それでいて力強い、まさに普洱茶熟成のお手本のように育っています。

班盆古樹純料谷花茶 2012年
班盆古樹純料谷花茶 2012年

樹齢300年以上の茶樹から完全手作りで作られた普洱生茶です。
名前の中にある「班盆」という言葉はこのお茶の産地の村の名前です。雲南省の有名な布朗山、その中にある老班章と程近い場所にある村で、標高は1700~1900mという場所にあります。班盆は老班章と同様に古茶樹園が知られ、このお茶はその中でも樹齢300年以上の茶樹から作られています。

この普洱茶はまるで蜜をそのまま飲んでいるかのような、素晴らしい香りを持っているお茶です。普洱茶というと独特の香りを連想する方も多いと思いますが、このお茶は緑茶や白茶に近いような、フレッシュさを持っています。

今回、このお茶は中国で高名な普洱茶専門家である私たちの師から特別に譲っていただきました。師が自ら現地へ赴き、作った、とても貴重なお茶になります。あまりにも上質な茶葉を使用しているため、グラム数の大きくなる餅茶にすると非常に高額になってしまうために、1つ1つ小さな固形茶にしたというお茶です。
是非この機会に特別な普洱茶をお楽しみください。

易武 再訪

易武

2017年の春の雲南行きでは易武での製茶を中心に見せていただいてきました。前年12月に訪れた易武古鎮で代々製茶を営む友人の製茶場を再訪、こちらをベースに色々と見せていただきました。
12月に来た際には静かだった古鎮も4月は製茶シーズン真っ最中ということもあり、静かな中にも活気があるような、この時期独特の雰囲気に変化しています。小さな古鎮にも人が増え、地元の人たちに加えてこの時期は買い付けに来る茶商さんたちの姿も見られます。特にここ最近は中国国内で普洱茶が投資対象として注目を集めていることもあり、そのような普洱茶を買い付けようと長期間に渡って滞在するバイヤーも多く見られます。

易武

製茶自体は3月から始まりますが製茶工程自体は4月でも最盛期という状態です。毛茶(荒茶)のメンテナンスは当然、広い茶山ではまだ茶摘みも始まっていない場所もかなりあります。一口に易武といっても茶山はとても広く、また場所によって気温などもかなり異なります。山深い場所にある野生茶樹などはこれからが茶摘み、製茶の本番ということも。
早朝に出かけていって登山、茶摘みを行って下山、戻ってくるのは夜も遅い時間という場所も多く(そういった場合はそのまま深夜まで製茶を行います)、この時期の作り手さんたちは本当に大変です。

易武

2017年の春の雲南は私たちが滞在していた時には無かったものの、大雨や雹などでかなりの減産となってしまい大変な年でもありました。易武だけでなく、勐海(モウ海)の老班章なども同様で、全体的に普洱茶の価格高騰が激しい年でもありました。
こうした話を聞くとその年のお茶はよくないのではと思いがちですが全てのお茶がよくないということではありません。大雨や雹に見舞われる前に摘み取りができた茶葉も少なくありません。また、茶山は広く、山を越えるだけで気候も変わるようなことも少なくなく、被害のない場所などもあります。茶農家さんや茶業さんも生活があるため、減産した分は価格に反映するしかないということはありますが、特に中国では縁が重視されるということもあり、信頼関係がしっかりしている場合はそれほど影響しないということもあります。なにより、こういった年は普洱茶に限らず他の茶産地も同様ですが、突出して良いお茶も出てくることも多く、自然というのは不思議なものです。

易武

易武には数日間滞在させていただき、茶摘みから製茶までじっくりと見せていただきました。
茶摘みについてはかなり山奥の野生茶樹まで行かなくてはならないということで、当初は危険すぎるので連れていけないとまで言われたものの、日本からわざわざ来たのだからと連れていっていただいたりとご迷惑をおかけしながらもたくさん勉強させていただきました。
かなりたくさんのことを教えていただいたので全てをご紹介しきれないのですが、少しずつご紹介させていただきます。


南糯山 古樹雲南紅茶 2017
南糯山 古樹雲南紅茶 2017

古茶樹で有名な雲南省南糯山の樹齢300年以上の茶樹から作られた、非常に上質な古樹雲南紅茶です。通常、雲南紅茶は俗に言う茶畑で栽培された若い栽培茶樹から作られますが(台地茶)この古樹雲南紅茶は上質なプーアル生茶を作るような、少数民族が代々大切に守ってきた古茶樹から手摘みで丁寧に摘み取られた茶葉から作られています。
毎年楽しみにされるお客さまも多く、当店でも人気の高い紅茶です。

艶やかな黒褐色の茶葉にゴールデンチップの金色が差し込んだ非常に美しい茶葉です。金色一色の雲南紅茶と違い、非常に深い甘味と複雑な旨み、古樹の持つミネラル感が素晴らしい紅茶です。

雲南紅茶は甘味を出しやすく、飲んで誰もが美味しいと思うお茶が多いものです。その反面、味わいが単調で飽きやすい、飲み続けにくいということもあります。この雲南紅茶は複雑さと奥行きの深さが違います。雲南紅茶は飽きやすい味わいが多く、当初は当店でもご紹介していなかったのですが、この南糯山の紅茶は私たちの認識を覆すものでした。自信を持っておすすめいたします。

無量山 寨子坡 2008年
無量山 寨子坡 2008年

蜂蜜のような香りと甘くミネラル感がしっかりとある、とても美味しい普洱茶です。
渋味や苦味が少ないのは無量山のお茶の特徴ですが、この2008年の寨子坡もその特徴が良く出ているため、渋味・苦味はもちろん、雑味は一切感じません。回甘も強く、余韻が長く続きます。煎持ちも良く、柔らかく優しく、しっかりと美味しいお茶になっています。

この2008年の無量山 寨子坡は現地に住むイ族によって作られました。標高1700~2400m付近の半野生古茶樹(無肥料・無農薬)から摘み取られた茶葉を使用しています。採取した場所の標高にばらつきがあるのは茶園のものではなく、原生林のような山の中に点在する茶樹から摘み取っているため、正確な標高が分かりません。また、樹齢も樹高などから200年は軽く越えていると思われますが、正確な樹齢は分からないということです。昔ながらの作り方で丁寧に作られた普洱茶です。

モウ海茶廠 訪問 その2

モウ海茶廠

基本的に工場内は撮影禁止とのことで、写真はとても少ないのですが、掲載の許可をいただきましたので改めていくつかご紹介させていただきます。
これは一源井と呼ばれる井戸です。勐海茶厂(モウ海茶廠)に古くからある井戸で、圣泉(聖泉)とも呼ばれ、とても大事にされています。この井戸の水質が非常によく、今も餅茶の成形の際に使用する蒸気はこの井戸の水が使われているそうです。

工場内を一通り見学した後に、すぐそばにある研修施設でこの井戸の水を使ってお茶を淹れていただきました。とても柔らかくて甘い水で、この水を使ったお茶は優しく深みがあり、美味しくいただきました。
ちなみに工場の周囲には研修施設の他にも社員寮や社宅などが立ち並んでいて、このあたりはモウ海茶廠とその関連施設で働く人たちの集落のようになっています。とても福利厚生なども充実していて、雲南省だけでなく中国全土からモウ海茶廠へ就職しに来る人も多いのだそうです。

モウ海茶廠

現在の一源井は葉などが井戸に落ちることを防ぐために鉄帽子と呼ばれる蓋がされています。最上部はガラスになっています。中を除くとかなり深い井戸であることが分かります。10m以上の深さがあるそうで、中にはパイプが設置されていて、そこから工場内へ汲み上げられています。
苔とシダが生えていて、井戸の中は不思議な静かさを持った雰囲気になっています。

この井戸の底にも入ることができるそうです。ただし実際に製茶に使用している水ということもあり、徹底的に管理されています。入ることができる人はごく一部の方だけだそうです。

モウ海茶廠

これは熟茶の醗酵槽です。現在のモウ海茶廠ではこのように近代的な設備で醗酵を行っています。
この醗酵槽がある7号院(7号館)では40年以上にわたって熟茶の醗酵に使用する麹菌の研究が続けられています。研究施設も見せていただきましたが、様々な麹菌があり、原材料の茶葉の種類や状態、目的とするお茶の味わいや香りに合わせて使い分けを行っているそうです。
こうした近代的な醗酵槽だけでなく、昔ながらの醗酵槽も復刻版としての製品を作る際に一部使用していますが、衛生管理、製品管理という観点からも現在はこのような設備で醗酵を行うことが主流になっているそうです。

工場内はとても近代的なビルが並んでいると思えば、平屋の昔ながらの製茶場も並んでいたりします。どちらも稼働している工場で、製品によって、工程によって使い分けを行っているそうです。


プーアル熟散茶 2009年
プーアル熟散茶 2009年

普洱熟茶には定評のある勐海茶厂(モウ海茶廠)の大益・普洱熟散茶です。
大益には珍しく固形茶ではなく散茶の形状で2009年の製造です。
深みのある旨味と甘味があります。香りはナッツのような香ばしい香りとナツメのような果物の香りがあります。カビ臭さなどは一切感じません。湯温が高い時にはアミノ酸系の旨味が強く感じられます。湯温が下がってくると回甘が強くなってきて、果物のような味と香りが強く出てきます。
普洱茶は臭いと思っている方、美味しく無いお茶と思っている方にはもちろん、普段使いの普洱茶として飲みやすくおすすめです。まさに普洱熟茶の基本となるような美味しいお茶です。

新会柑 大紅柑
新会柑 大紅柑

雲南省の西双版纳勐海茶区で作られた普洱熟茶を茶枝柑と呼ばれる果実の中に詰め、焙煎、熟成を行った陈皮(陳皮)普洱茶です。
11月から1月にかけて収穫された大紅柑に宮廷級普洱熟茶を丁寧に詰め、何日もかけて低温で焙煎を行います。
大紅柑は陳皮と呼ばれる漢方として珍重される果実でもあります。年数が経過すればするほど体によく、香りが良くなるとされ、この陳皮普洱茶も10年以上保存が可能なものです。果実、大紅柑自体の品質も大変に良いものを使用しています。漢方生薬として珍重される程に品質の高い大紅柑です。

ヘタの部分を除き、中に詰められている宮廷級普洱熟茶を取り出し、大紅柑の皮を必要に応じてちぎって一緒にお茶と淹れてお楽しみください。甘く柔らかい香りが素晴らしく、また、使用されている普洱熟茶の甘味に寄り添うように一体感のあるお茶が楽しめます。とても身体が温まり、飲みやすく、バランスの良いお茶です。上質なオレンジティーのような香りと甘い味わいで、普洱茶とは思えないほどの洗練された美味しさです。

モウ海茶廠 訪問

勐海茶厂(モウ海茶廠)

4月に中国・雲南省を訪れました。
その際に目的地ではないのですが、現地友人たちのおかげで大益ブランドで有名な勐海茶厂(モウ海茶廠)を訪問、内部を見学させていただきました。
モウ海茶廠といえば普洱茶。中でも普洱熟茶は最初にその製法を作り出したのがこの茶廠です。四川省で作られる蔵茶などの技術を取り入れて熟茶の製法を編み出したと言われています。今でもモウ海茶廠、大益の普洱熟茶といえば品質の高さでよく知られています。

モウ海茶廠の工場は雲南省の普洱茶の産地にいくつかありますが、訪問させていただいた工場は最も古くからある勐海の中心にほど近いばしょにある工場です。手前に「勐海茶厂」と大きく書かれた門をくぐって、しばらく進むと工場があります。門から工場までは結構距離があり、その間には工場で働く人たちや、かつて工場で働いていた人たちの住居などで、ちょっとした集落のようになっています。

勐海茶厂(モウ海茶廠)

基本的に工場内は撮影禁止とのことで写真でご紹介できないのが残念ですが、とても広く清潔な工場です。
古くからある建物と新しく造られた建物が混在していて、製品や工程に合わせて使い分けられています。
敷地内には古い井戸もあります。その水が非常に美味しく良い水質であることから熟茶の製造に使われているそうです。今も現役で使用されている井戸で、特別にその水を飲ませていただきましたが、とても美味しいお水でした。

勐海茶厂(モウ海茶廠)

すべての工程を見せていただき、色々と説明や質問などにも応えていただきましたが、すべてに共通して印象的なのは衛生管理が徹底していることです。基本的に大手の製茶工場では衛生管理が行き届いていることが多いのですが、中でも大益、モウ海茶廠のそれはかなり徹底されています。
また、コスト削減や生産管理への工夫など、さすがと思わせることも多いです。例えば昔からの普洱餅茶は7枚を1セットとして竹の皮と竹ひごでまとめますが、大益では廃止して専用の紙袋に入れてまとめます。これは昔ながらの方法の場合は専門の技術が必要となり、誰でもできる工程ではなくなってしまいます。また、作業効率も決して良いとは言えません。紙袋に入れるという変更により、それほどの技術が必要ないことや時間の短縮などが期待できます。このような工夫は至る所で行われていて成形工程などもモウ海茶廠ならではの工夫が見られます。

勐海茶厂(モウ海茶廠)

工場内は撮影禁止ですが、工場のすぐそばにモウ海茶廠のブランド、大益のカフェがあり、そこでは自由に撮影させていただきました。
まるでスターバックスのようなカフェです。ただし大益が運営していますので、コーヒーではなくすべてお茶です。ラテなども普洱茶ラテです。これが結構美味しいのですが、熟茶の甘さと濃さが意外とラテにすると相性が良く、さっぱりと軽く楽しめるようになっています。普洱茶が原材料に使われているクッキーやケーキなどもあります。
工場の前にあるこのカフェはショールームの役割も兼ねているようで、大益の様々製品が展示販売されています。また、一般の方は立ち入ることができませんが、上階にはプレゼンルームと研修施設もあります。(それとは別に本格的な研修施設も近くにあります。)
このカフェ、雲南省の昆明長水国際空港や景洪のシーサンパンナ・ガサ空港にもあります。なかなかこの工場まで来る方はいらっしゃらないと思いますが、昆明や景洪にお越しの際は利用してみると面白いかもしれません。

モウ海茶廠では製茶工程はもちろん、発酵に使用する麹菌の種類についてなど、工場内外の施設なども含めてじっくり見学させていただきました。熟茶についての認識が改まった旅のはじまりです。


南糯山 古樹雲南紅茶 2017
南糯山 古樹雲南紅茶 2017

この勐海のモウ海茶廠からそう遠くない場所にある古茶樹で有名な雲南省南糯山の樹齢300年以上の茶樹から作られた、非常に上質な古樹雲南紅茶です。
通常、雲南紅茶は俗に言う茶畑で栽培された若い栽培茶樹から作られますが(台地茶)この古樹雲南紅茶は上質なプーアル生茶を作るような、少数民族が代々大切に守ってきた古茶樹から手摘みで丁寧に摘み取られた茶葉から作られています。

艶やかな黒褐色の茶葉にゴールデンチップの金色が差し込んだ非常に美しい茶葉です。金色一色の雲南紅茶と違い、非常に深い甘味と複雑な旨み、古樹の持つミネラル感が素晴らしい紅茶です。

雲南紅茶は甘味を出しやすく、飲んで誰もが美味しいと思うお茶が多いものです。その反面、味わいが単調で飽きやすい、飲み続けにくいということもあります。この雲南紅茶は複雑さと奥行きの深さが違います。

2017年は大変品質が向上し、美味しく香り高く仕上がりました。複雑なミネラル感、上品な香りと甘味のバランスが最高の仕上がりとなっています。例年とは格の違う美味しい紅茶となり、現地価格もかなり上昇、倍近くの価格となってしまいましたが、作り手さんのご好意で昨年とあまり変わらない価格でご提供させていただきます。

麗江の茶馬古道

束河古鎮

雲南では西双版納の他に麗江へも再訪してきました。前回訪問した秋とちがって、この12月は訪れる人も少なく、また違った表情を見せていました。麗江の束河古鎮を中心にいくつか古鎮をまわりましたが、基本的にこのあたりは茶馬古道として栄えた場所です。今でもその痕跡が残っていて、こうした石畳も茶葉古道ならではの風景です。四川ルートも同じように石畳であったり、その跡が残っています。

束河古鎮

束河古鎮の中心から少し外れた、現在の古鎮の外周、山に沿った細い道が、かつて茶馬古道としてメインに使われていた道とのことを地元のお年寄りにお聞きして行ってきました。
人の多い中心から外れていることもあり、人影もまばらですが、側溝に綺麗な水が豊富に流れる綺麗な道でした。この側溝は昔も今も、この地に住む人々の生活用水として使われていて、果物や飲み物を冷やしたり(とても水が冷たいです)、野菜を洗ったり、この水で水撒きをしたりしています。

束河古鎮

少し歩くと観光地としてのお店などはすっかり影を潜めて、畑や地元の人向けの商店などが並ぶようになります。かなり古い建物が多く、中には既に傾いている建物もありますが、そういった建物も補強しながら使用しているようです。凄いですね。売っているのは日用品や地元の野菜や果物など。長くこの地に住む人々の生活を支え続けてきたのでしょうね。

束河古鎮

この束河古鎮は麗江の中でも水が非常に綺麗です。その束河古鎮の中でも、この茶馬古道のあたりは中心から外れているせいか更に水が綺麗なのが印象的です。
地元のナシ族のご夫婦がこうして洗い物をしている風景も素敵ですね。このあたりでは水をみんなが綺麗に快適に使用するために、野菜や果物を洗ったり冷やす場所と洗い物をする場所、洗濯をする場所と水の使用場所が決まっているそうです。

束河古鎮

この茶馬古道から少し道を外れた場所に、かつて束河茶馬王と呼ばれた王氏一族の建物が残されています。以前は束河茶馬王故居記念館として公開されていたそうですが、訪問時には閉められていました。かなり建物の損傷も多く、人気も感じられなかったので、現在は公開を中止しているのかもしれません。
それでもかつての栄華を伺わせる立派な邸宅で、茶馬古道が実際に活用されていた頃を思わせます。最盛期には3500頭以上の馬を保有し、4000人以上が働き、交易はチベットを越えてネパール、インドなどまで行っていたとか。

白沙古鎮

麗江の白沙古鎮から望む玉龍雪山です。麗江では天気が良ければ、至る所でこの山を眺めることができます。
この山の向こうはもうすぐ西蔵、チベットです。茶馬古道の雲南ルートでは西双版納をはじめとする雲南各地で作られたお茶が、この麗江を通ってチベットやその先のネパール、インドまで運ばれていました。
四川ルートも同様ですが、その自然の険しさ、そこを乗り越えて運ぶ人々の凄さを実感できます。


中茶牌 藍印鉄餅 春尖 2006
中茶牌 藍印鉄餅 春尖 2006

中茶牌の鉄餅の歴史は古く、1950年代まで遡ります。
元々はロシアなどの輸出向けに鉄の型を使って整形する製法で作られていた普洱生茶です。通常、石と布を使って整形する普洱茶ですが、この鉄の型を使うことで独特の風味が生まれ、当時、初期生産のものは今や手の届かないほどに高価なお茶として知られています。この藍印鉄餅は2006年に作られた、その鉄餅の復刻版です。

雲南中茶公司による、この藍印鉄餅は春尖、早春の清明節前に1芯3葉で摘み取られた上質な茶葉を使用して2006年に作られました。出庫直後から広州乾倉で、ほぼ10年間熟成を行っています。広東入倉ですが土臭さなどは感じられません。

広州乾倉の中でも非常に腕の良い茶商によって熟成されているせいか、高く見事と言えるほどの綺麗な樟香が楽しめます。心地よい柔らかい収斂味、しっかりと、そして長く続く回甘とのバランスが本当に素晴らしい生茶に育っています。生茶の強さはすっかり影を潜めて、柔らかく、優しく、それでいて力強い、まさに普洱茶熟成のお手本のように育っています。

通常であれば倉熟成を行い、ここまで状態が良く、香り高い普洱茶はそれなりに高価になります。今回、黒茶専門家として大陸ではとても高名な師のおかげで現地と殆ど変らない価格でご提供できることになりました。とても美味しく、そして本当におすすめできる普洱茶です。

※1筒(7枚)でご購入をご希望の場合はお問い合わせください。(45,500円・税抜)

無量山 寨子坡 2008年
無量山 寨子坡 2008年

蜂蜜のような香りと甘くミネラル感がしっかりとある、とても美味しい普洱茶です。
渋味や苦味が少ないのは無量山のお茶の特徴ですが、この2008年の寨子坡もその特徴が良く出ているため、渋味・苦味はもちろん、雑味は一切感じません。回甘も強く、余韻が長く続きます。煎持ちも良く、柔らかく優しく、しっかりと美味しいお茶になっています。

この2008年の無量山 寨子坡は現地に住むイ族によって作られました。標高1700~2400m付近の半野生古茶樹(無肥料・無農薬)から摘み取られた茶葉を使用しています。採取した場所の標高にばらつきがあるのは茶園のものではなく、原生林のような山の中に点在する茶樹から摘み取っているため、正確な標高が分かりません。また、樹齢も樹高などから200年は軽く越えていると思われますが、正確な樹齢は分からないということです。昔ながらの作り方で丁寧に作られた普洱茶です。

易武天能茶庄

易武天能茶庄

易武古鎮にある友人の茶庄を訪ねてきました。
この易武天能茶庄は易武でも9代続く古くからある茶業の1つです。大きな茶業ではなく、家族、親戚と近くに住む昔から代々手伝いをしてくれる従業員家族数名(従業員も代々この茶業で働いているのだそうです)で営まれています。
機械を使わずに丁寧な仕事で、とても甘く優しい「易武」らしい清らかなお茶を作ります。古茶樹にこだわり、その真摯な仕事ぶりと理論的な製茶はとても美味しく、以前から私自身が愛飲させていただいています。

この時は12月ということで基本的に製茶はお休みです。それでも、こうして餅茶の成形を行うことのできる製茶場には他の茶農家や茶業から成形の依頼が入ってきます。毛茶の状態で熟成を行った普洱茶を成形して出荷します。この時も易武の他の茶業から持ち込まれた普洱茶の成形が行われていました。

製茶については2017年の4月に再訪した際にゆっくり見せていただきましたので、また改めてご紹介させていただきますが、この製茶場には最低限の製茶機械しかありません。揉捻機はもちろん、篩分機も乾燥機もありません。あるのは餅茶の成形の際に使う茶葉を蒸す機械だけです。徹底して昔ながらの手作業にこだわる姿勢が、この美味しさを作り出しているのかもしれません。

易武天能茶庄

そして、この製茶場の清潔さも徹底しています。製茶場への入場は必ず靴を履き替え、指定の帽子をかぶらなければいけません。髪の毛の長い女性は帽子の中に髪の毛を入れることと定められていて、こうした小規模な製茶場でここまで衛生管理に徹底している製茶場も非常に珍しいと思います。有名な製茶企業の工場でもここまで清潔に徹底した管理を行っているところは滅多にありません。

この写真は直前まで餅茶を形作る圧延工程が行われていた場所です。本当に綺麗ですね。
この製茶場ではもちろん昔ながらの石の重しを使った石磨圧延を行っています。人が全てを行うので、とても重労働ですが、機械で圧延するよりも熟成が柔らかく進み、味わいも香りも良くなります。この製茶場では石磨圧延しか行いません。

易武天能茶庄

石磨圧延に使用する重しにも色々なサイズがあります。これは通常よりも大きな餅茶、1斤(500g)餅をつくる際に使用するものです。通常よりも2回りほど大きいサイズになっていますが、厚みはその分減るようです。聞けば人が持ち上げて作業するので、あまり重くすると作業ができないということや、身体を痛めてしまうとのこと。確かにそうですね・・・通常の大きさでも、この重しは相当な重さがあります。石磨圧延の大変さが分かります。
ちなみに写真は友人の老板(社長)です。軽々と持ち上げていますが、普段から自ら製茶しているので、かなりの力持ちです・・・

易武天能茶庄

通常、こういった小さな製茶場でも餅茶を乾燥させる機械や乾燥室が用意されています。しかし、ここでも「晒日」にこだわります。この製茶場にはそういった機械や設備はありません。製茶のご紹介の際に改めてご紹介させていただきますが、実はガスすらも使いません。殺青工程も味に関わるから全て薪を使用する徹底ぶりです。

隣の部屋では乾燥の終わった餅茶の包装が行われています。慣れた手つきで美しく餅茶を包装していきます。

易武天能茶庄

この餅茶を包む紙は通常の紙とは少し異なります。楮が多く含まれた専門の紙を使用します。最近はこの紙も品質の良くないものが増えているそうで、長く保存、熟成させるお茶を包む紙がそのようなものであってはならないと、紙の品質にもこだわっているそうです。
写真は珍しく何も印刷されていないものですが、通常はお茶の種類などを印刷したものを使用します。(この餅茶はこの後に有名な書家の方に筆入れしていただくそうです。)

易武天能茶庄

通常、易武などの産地では製茶したお茶は全て出荷してしまいます。しかし、ここは小さいながらも乾倉を持っています。殆どは出荷してしまいますが、自分たちが気に入ったお茶、とっておきのお茶などは、この製茶場の端にある乾倉で熟成が行われています。
温湿度の管理は本当に厳しく管理していて、こうした温湿度計が1mおきに設置されています。このこだわりはかなりもので、この製茶場を訪れる人が普洱茶を求めても、この乾倉で保管しているお茶については老板(社長)が話をして納得しないと売りません。主に話をするのは保管場所の話。私も以前からお茶を買わせてもらう度に保管場所の平均温度と平均湿度を聞かれます。それに老板が納得して初めて譲ってもらうことができます。厳しいです。(^^;

易武天能茶庄

これだけ徹底して昔ながらの手工、手作りにこだわり、保管にも熱心な茶業というのも珍しいと思います。現在の老板のお父様、何能天老師は易武でも名作り手として有名な方です。息子である現在の老板は、その技術を感覚だけではなく、きちんと論理的にも整理、実践、改善していくことで易武のお茶を守ろうとしています。易武に限らず、製茶業では珍しいタイプで、これからの易武の発展はこうした若手にかかっているのかもしれません。


能天源七子餅茶 易武正山古樹 古式手工 2014
能天源七子餅茶 易武正山古樹 古式手工 2014

ようやくショップでご紹介するために譲ってもらうことができたお茶がこちらです。
易武天能茶庄の乾倉で3年間、大切に熟成させています。

使用する茶葉は易武の山深い場所にある自然のままに育った古茶樹、茶葉の殺青(発酵を止める工程)もガスではなく薪を使い、製茶機械を可能な限り使用しない昔ながらの製法にこだわっています。もちろん、圧延工程も昔ながらの石磨圧延です。

非常に高く綺麗な、そして長く続く見事な、易武の人たちの言うところの「蘭花香」が感じられます。ちょうど熟成が一段落したところで、本来持っている香り高さに加えて蜜のような甘い香りも深く出ています。易武らしい甘味は深くしっとりと、優しいミネラル感とあわせて複雑な、それでいて喉に心地よい仕上がりになっています。3年間熟成させていますが、易武での徹底した乾倉管理ということもあり、いわゆる陳香は感じられません。

飲み終えた時にはぜひ葉底、茶殻もご鑑賞ください。大変に丁寧に作られた綺麗な茶葉です。

2017年 麻黒寨 喬木古樹茶
2017年 麻黒寨 喬木古樹茶

易武、麻黒寨の茶農家を営む友人の作った喬木古樹茶です。

できたばかりの普洱生茶は強くて美味しいと感じられないと思いがちですが、このお茶は違います。雲南の普洱茶の中でも特に易武は甘いお茶であることが知られていますが、この麻黒寨で作られたお茶はその特徴がよく分かるように優しく甘いお茶に仕上がっています。香りは見事な蜜香が感じられ、飲み込んだ後の余韻も非常に長く強く感じられます。しっかりとしたミネラル感がありながらも、優しく、とても心地の良いお茶です。

ここ数年、普洱茶の作り方は少しずつ変わってきています。これは易武に限らず、全体に言えることです。その変化が良く分かる普洱茶だと思います。易武らしさは十分に、萎凋を丁寧に長く行い、普洱茶として最高に丁寧に作られた上質なお茶です。普洱茶の概念が変わるお茶かもしれません。

易武古鎮

易武古鎮

易武の友人を訪ねてきました。
易武は景洪から見ると勐海とは逆方向の勐腊県、ざっと120kmの距離にあります。とはいえ、勐海のように道路が整備されているとは言い難く、また、山深い場所にあるため車でもかなり時間がかかります。私たちが行った際にも土砂崩れや細い山道での事故などが発生し、通行止めになることが数回あり、当初予想していた時間の倍以上、出発した景洪からは5時間近くかかって到着しました。

易武は六大茶山(革登、倚邦、莽枝、蛮砖、曼撒、攸乐(基诺))の中心となる場所です。その中でも入り口となるのが易武郷です。決して大きくない山間の町ですが、その先の麻黒寨や大漆樹寨といった村にはこのような町はありません。日用品や食料品の市場、学校や銀行(小規模な支店ですが)、商店や旅館、ホテルなどがあるのも易武郷で、茶山に住む人々の中心となっています。

易武古鎮

その易武郷の横に昔ながらの易武古鎮があります。本来はこの易武古鎮がこの地域の中心でしたが、古い集落であるため道幅も狭く、迷路のような細い路地が続き、車が入るのもぎりぎりです。そのような事情もあり、現在の町の中心は易武郷と呼ばれる町と易武古鎮と区分けされるようになりました。
易武郷と違い、易武古鎮は歩く人も少なく、とても静かな集落です。少数民族から漢民族(といってもかなり昔に移住してきた人たちが殆どです)が入り混じって住み、お茶に関わりながら何世代も生活をしています。

易武古鎮

山の中にあるため起伏が激しく、古い石畳が続きます。古鎮自体はとても小さく、古い建物が密集している場所はあっという間に終わり、だんだんと茶畑が見えてきます。このあたりで採れる茶葉は決して上質なものではありませんが、この地で暮らす人達の日常のお茶として生活に欠かせないものとして栽培されています。また、易武古鎮に限らず、こうした茶山では茶樹栽培が優先されるため、野菜などの農家が非常に少ないのも特徴です。その為、生活に必要な野菜などは別の場所から運んでくることが多く、実はそういった食料品の価格は都市部よりも高くなっています。そうしたこともあり、ちょっとした自家用の野菜を作るといった小さな畑が古鎮の周辺には点在しています。

易武古鎮

古鎮を歩いていても殆ど人に出会いません。たまにすれ違う人がいても、若い人は殆どいないといった状態です。多くはお年寄り、あるいは子供たちといった感じで、お茶の名産地である易武でも後継者問題というのは深刻なようです。中にはこの地に残り、お茶を作り続ける人たちもいますが、若い人の多くは都市部へ働きに行ってしまったり、野菜や果物と違って収穫した後にも製茶という加工が必要という、いわゆる農業の中でも重労働な製茶を嫌って街へ出る人も増えているそうです。

易武古鎮

易武古鎮の全景です。山に張り付くように集落が作られています。古い建物は老朽化が激しく、今も残っている建物の半分以上は既に人が住まない空き家になっているそうです。建て直しも進んでいて、訪問時の12月は製茶があまり行われない時期ということもあり、建物の建て直しや修復を行っている場所も多く見られました。数年もしたら、またこの景色も変わってしまうのかもしれません。


班盆古樹純料谷花茶 2012年
班盆古樹純料谷花茶 2012年

樹齢300年以上の茶樹から完全手作りで作られた普洱生茶です。
名前の中にある「班盆」という言葉はこのお茶の産地の村の名前です。雲南省の有名な布朗山、その中にある老班章と程近い場所にある村で、標高は1700~1900mという場所にあります。班盆は老班章と同様に古茶樹園が知られ、このお茶はその中でも樹齢300年以上の茶樹から作られています。

この普洱茶はまるで蜜をそのまま飲んでいるかのような、素晴らしい香りを持っているお茶です。普洱茶というと独特の香りを連想する方も多いと思いますが、このお茶は緑茶や白茶に近いような、フレッシュさを持っています。

今回、このお茶は中国で高名な普洱茶専門家である私たちの師から特別に譲っていただきました。師が自ら現地へ赴き、作った、とても貴重なお茶になります。あまりにも上質な茶葉を使用しているため、グラム数の大きくなる餅茶にすると非常に高額になってしまうために、1つ1つ小さな固形茶にしたというお茶です。
是非この機会に特別な普洱茶をお楽しみください。

無量山 寨子坡 2008年
無量山 寨子坡 2008年

蜂蜜のような香りと甘くミネラル感がしっかりとある、とても美味しい普洱茶です。
渋味や苦味が少ないのは無量山のお茶の特徴ですが、この2008年の寨子坡もその特徴が良く出ているため、渋味・苦味はもちろん、雑味は一切感じません。回甘も強く、余韻が長く続きます。煎持ちも良く、柔らかく優しく、しっかりと美味しいお茶になっています。

この2008年の無量山 寨子坡は現地に住むイ族によって作られました。標高1700~2400m付近の半野生古茶樹(無肥料・無農薬)から摘み取られた茶葉を使用しています。採取した場所の標高にばらつきがあるのは茶園のものではなく、原生林のような山の中に点在する茶樹から摘み取っているため、正確な標高が分かりません。また、樹齢も樹高などから200年は軽く越えていると思われますが、正確な樹齢は分からないということです。昔ながらの作り方で丁寧に作られた普洱茶です。

南糯山 半坡老寨

南糯山半坡老寨

南糯山のいつもお世話になっている茶農家さんを訪問してきました。
景洪の街から勐海へ向かう途中に南糯山はあります。山に入って急傾斜の道をのぼっていくと、元々細かった道が更に細くなり、車のすれ違いも怖い位の細さになります。そういった道をのぼっていくと標高2000m位の場所に半坡老寨があります。小さな集落ですが、殆どは茶農家さんで構成されている、お茶の村です。
南糯山は昔から紅茶の産地として有名な場所です。1900年前半にはイギリス人がこの地で紅茶を作り、欧州へ輸出をしていました。現在も台地茶を中心に紅茶作りが続けられています。

南糯山半坡老寨

当店でご紹介している南糯山 古樹滇红(雲南紅茶)を作っている製茶場を見学させていただきました。残念ながら写真の撮影はできませんでしたが、本当に小さな製茶場で萎凋槽なども予想以上に小さな手作りのものです。
この古樹滇红(雲南紅茶)はとても上質なもので、本来であれば現在ご紹介している価格で中国国内であっても難しいほどのものなのですが、この茶農家さんを紹介してくださった私の師のおかげで特別に現在の価格でご紹介できています。そんな事情なので茶農家さんには利益の薄い買手ではあるのですが、快く暖かく迎えてくださいました。他にもたくさん質問などをさせていただきましたが、全てきちんと答えてくださいました。とても真摯な茶農家さんです。

南糯山半坡老寨

写真は製茶場を見学させていただいた後に見せていただいた古茶園です。樹齢300年以上の茶樹がたくさんあり、紅茶もこれらの茶樹から作られています。この茶樹もざっと350年です。
南糯山にはこのような古茶樹がたくさんあります。半坡老寨だけでも3500苗以上あるとのこと。ここもお茶が生活の一部として代々大切に守り続けられているのが分かります。

南糯山半坡老寨

こちらは樹齢600年以上の古茶樹です。半坡老寨といっても村から山の中の古茶園をずっと歩いて30分以上かかったでしょうか?更に先には樹齢800年以上の茶王樹があるとのことでしたが、日が暮れてきてしまったので断念しました。
この古茶園では樹齢300年程度は普通の茶樹として扱われていますが、さすがに樹齢600年以上ともなると囲いや支柱を作って大事にされています。この茶樹から作られたお茶を飲ませていただきましたが、とても甘く、心地の良い苦味と、力強くありながらも優しい素晴らしいお茶でした。


南糯山 古樹雲南紅茶 2016
南糯山 古樹雲南紅茶 2016

現在は完売しておりますが、2017年も秋にまた入荷する予定です。
とても上質で美味しい紅茶です。


大益 老茶頭 2014年
大益 老茶頭 2014年

リピーター様、おまとめ買いの方が多い安定した美味しさの大益 老茶頭ですが、現在ご紹介中のお品物で2014年ビンテージは最後となります。

次回入荷分より製造年が2015年に変更となります。
2014年をご希望の方はお早めにお求めください。


6月24日から6月26日までのあいだ中国出張のため、
発送業務をお休みさせていただきます。ご迷惑をおかけして申し訳ありません。

発送業務をお休みさせていただいている期間も、ご注文は変わらずお受けいたしておりますが、ご注文確認のメールやお問い合わせの返信メールなどに、いつもより少しお時間をいただく場合がございます。
大変ご不便をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。

賀開 製茶場

賀開 製茶場

賀開古茶園を見学した後は、老師の案内で同じ賀開茶山の中にある製茶場を訪問させていただきました。案内をしてくれている老師は老班章でも名作り手として有名な方で、その技術を学びたいという作り手さんたちも少なくありません。今回訪問させていただいた賀開の作り手さんも老師に師事している方の1人です。

製茶場は古茶園から少し山をおりた場所にありますが、とても眺めの良い場所にあります。急斜面の途中に建てられた製茶場からの眺めはとても気持ちよく美しかったです。これで12月の空とは思えないほどですね。

賀開 製茶場

時期的にもさすがに製茶は行っていませんでしたが、新しく作っている途中という紅茶の製茶場を見せていただきました。これは殺青釜ですが、まだ未完成です。この後に金属の釜を設置するようになっています。こういった製茶場は雲南に限らず自分たちで作ることが多いです。自分で建物から建てることも珍しくありません。
釜の傾斜は地域によって違います。西双納版は概ね同じような角度の傾斜が多いですが、四川省や浙江省、安徽省や福建省など、それぞれの地域によって角度や形式が変わってきます。

賀開 製茶場

これはできたばかりの萎凋槽です。紅茶の発酵を促進するために利用します。
下側に熱風を送り込むことで温度を上げて発酵を促します。通常はガスや電気などの熱源を使うことが多いのですが、ここでは薪を使用する予定とのことで、外側には薪を燃やす炉があります。
賀開の古茶樹を使用した紅茶を作るそうで、とても美味しそうですね。

賀開 製茶場

晒青に使うスペースです。かなり広大な空間で、雨でも大丈夫なように屋根があります。台湾の製茶にも同じような建物を利用しますが、大きく違うのは太陽の強さでしょうか。台湾の場合は雨を避けるという目的で作られますが、西双版納ではその他に強すぎる太陽の光を軽減するという目的でもあり、台湾の製茶場のように屋根の開閉はできないことが殆どです。
西双版納では日光がとても強く、あまりに強い太陽光は茶葉の色を変えてしまったり(まさに焦げたように黒くなります)、味わいにも影響するため、逆に日除けをつけたりしてコントロールしながら乾燥させています。


無量山 寨子坡 2008年
無量山 寨子坡 2008年

蜂蜜のような香りと甘くミネラル感がしっかりとある、とても美味しい普洱茶です。
渋味や苦味が少ないのは無量山のお茶の特徴ですが、この2008年の寨子坡もその特徴が良く出ているため、渋味・苦味はもちろん、雑味は一切感じません。回甘も強く、余韻が長く続きます。煎持ちも良く、柔らかく優しく、しっかりと美味しいお茶になっています。

この2008年の無量山 寨子坡は現地に住むイ族によって作られました。標高1700~2400m付近の半野生古茶樹(無肥料・無農薬)から摘み取られた茶葉を使用しています。採取した場所の標高にばらつきがあるのは茶園のものではなく、原生林のような山の中に点在する茶樹から摘み取っているため、正確な標高が分かりません。また、樹齢も樹高などから200年は軽く越えていると思われますが、正確な樹齢は分からないということです。昔ながらの作り方で丁寧に作られた普洱茶です。